《完結》BorDer 終焉【ars S.S】 (ページ15)

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His side Ⅰ ページ15

辛かった。

ずっと、辛かった。

幸せだったけど……辛かった。

Aは俺の大切な幼馴染みで、大切な妹同然の女の子で、ずっとずっと想っていた。

だけど彼女が俺を恋愛対象として見ることは、一度も無かった。

いつも、『お兄ちゃん』のポジションだった。

いつも、『恋愛のことについて真っ先に相談する人』だった。

クラスの男の子を好きになった。
電車でよく見る高校生が格好良い。
同じサークルの同級生に告白された。

……バイト先の先輩と、付き合うことになった。

『翔くん、先輩と付き合うことになったの！』
『え、マジで?! 良かったじゃん! やっと告白できたの？』
『ううん、向こうがね……んふふ』
『もー、俺の前でノロケんのやめろよな！』
『翔くんも早く彼女作った方がいいよー？』

Aの他の女の子と、一緒になるつもりなんてさらさら無かった。

こっちを向いてもらうことはとうの昔に諦めている。
それなら俺は、Aに二番目に近い男でいい。

それでいいから、お前の側にいさせてくれ……。

Aは『先輩』との交際を、俺以外の誰にも言っていなかった。

理由を聞くと、「今度のはほんとのほんとに本気だから」って。

今さらながらちょっと傷付いている自分に呆れた。

初めてデートに行ったことも、初めてキスしたことも、初めてお泊まりしたことも、初めて旅行に行ったことも、初めて相手の実家に行ったことも全部全部、嬉しそうに話してくれた。

君が幸せなら、俺はそれでいい。
幸せな君の笑顔を近くで見させてくれるなら、それ以上は望まない。

プロポーズされたって、泣きながら電話してきた夜のことは今でも鮮明に覚えている。

幸せが詰まった泣き声に、心からの祝福を贈った。

電話を切ってから、少しだけ泣いた。

純粋無垢な、君に幸あれ。

俺の長い片思いもやっと終われるんだ。

スッキリした、ような気も、しないではなかった。