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#119 ページ1
「ただいまー」
その声に、目を開けた。
外はもうすっかり暗くなっていた。
干した洗濯物が、暗闇の中で少しだけ揺れている。
カーテンを開けたままだったのに気付いて、閉めてから玄関に行った。
「おかえりなさい」
「うん、ただいま」
重いカバンを受け取ると、彼はリビングに入って行った。
背広の後ろ姿をしばらく見つめてから、私もリビングに戻る。
受け取ったカバンを脇に置き、目を閉じた。
ここで過ごした僅か四ヶ月足らずの日々を、そっと思い出す。
病院で目覚め
リハビリに打ち込み
豪華なマンションに驚き
恐る恐る料理を作り
大きな布団に包まれて眠り
朝食を作って仕事へ送り出し
私は穏やかに、笑っていた。
静かに目を開いて、スッと息を吸った。
「櫻井さん」
私が声を掛けると、ネクタイを緩めていた彼はうん？ と振り返った。
「大事なお話があります」
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作者名：琴子
| 作成日時：2017年1月21日 18時
