#3. 醤油 ページ3
ピーンポーン
その数日後、またチャイムの音が響いた。
それだけなら、たまに来るスーパーの宅配サービスとかそういう可能性もあるんだけど、
すぐに聞こえる連打の音。
うるさい。でも、出ない。
執拗に鳴り続けるチャイムを辛抱強く無視し続けていたら、
ガンガンガン!!
……え？ 嘘でしょ、何アイツ、人の部屋のドア蹴ってんの?!?!?!
「オイ!! いるんだろ、ヒキコモリ!! さっさと開けろや!!」
「ひっ……」
ガツンと響く怒鳴り声に、思わず身を縮める。
無視し続けようかとも思ったけど、何だかその内ドアを破って入って来られそうな勢いだったから、渋々、玄関まで行った。
チェーンを掛けてドアを開ける。
「チッ、またそれかよ」
今日も真っ黒な男の子。ドアの狭い隙間に、顔を押し付けるようにして睨んでくる。
近いんだけど……。
「なぁ、醤油貸せや」
「……は？」
「しょーゆ。何、ニホンジンのくせに醤油知らねぇの？」
いや……醤油は知ってますけども。
そこじゃなくて、さ。
「醤油無いの？」
「うん。無い」
「買いに行けば？」
「今は無理」
「は？」
「今は、無理なの。何時？ 昼だろ？」
「知らない」
「時計ねぇの？」
「無い。時間に興味無い」
「あっそ」
「何で今は無理なのよ。ってか、何で私に聞くの？」
「だって、醤油が無くなったらお隣さんに借りんのは常識だろ？」
「アンタに常識語られたくないし、それ時代錯誤もいいとこだから」
チェーンロックを掛け、私は少し身を引き、彼はドアの隙間に顔を押し付けたまま不毛な会話を繰り広げる。
「で、いいから醤油貸せって」
「それが人にものを頼む態度？」
「貸せよ」
「人の話聞かないし……」
「はーやーく」
「ったく……。あのね、そういうこと言う前に名前くらい教えたら？」
「え？ 俺、言ってなかった？」
「聞いてない。し、言ってない」
「あ、そ。俺、カズ」
「カズ？」
「カズ」
「フルネームは？」
「知らね。んなもん無い」
「はぁ……？」
「ハイ、醤油」
カズが、ドアをガンガン叩いてくる。
私の名前は訊かないのかよ……。
そろそろウンザリしてきたから、醤油を渡してさっさとお帰り頂くことにした。
そもそも私、人と話すのも何年かぶりだし。
こういうヤツ、苦手なタイプだし。
醤油くらいあげるし。
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琴子(プロフ) - かりんさん» 面白いって言っていただけてとても嬉しいです(*^^*)ありがとうございます！！ 家庭的な吸血鬼…いいですよね…。笑 そろそろ復帰しようかな(といいつつも全然書けてないんですけど)と思っているので、また新作上げられたら、ぜひぜひよろしくお願いします(*´ω`*) (2018年12月17日 13時) (
レス) id: 41dca15b9a (このIDを非表示/違反報告)
かりん - うわあ･･･。コレも面白い･･･(すいません、コメし忘れてました((( いや、コレも最高･･･！ニノがバンパイアってとこもいいし､無駄に家事とか出来るとこも大人ぽくって素敵(*´/\`*)ﾑﾌ (2018年12月15日 20時) (レス) id: 26fab03e05 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 名無し15142号さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…！ 皆様からの反応が励みです、頑張ります^^ (2016年11月28日 18時) (レス) id: 0fa230570d (このIDを非表示/違反報告)
名無し15142号(プロフ) - いつも見てます。面白いです。頑張ってください。 (2016年11月28日 18時) (レス) id: 71927324b6 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - なこさん» 赤飯も通販で売ってるかなぁ(笑)そうです、私だからね、絶対何かしらやらかしますよね、よく分かってらっしゃる。笑 まぁードキドキしながら待っててください！！ (2016年11月12日 17時) (レス) id: 0fa230570d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琴子
| 作成日時：2016年10月30日 15時
