トリップ３６ ページ45
その日、起きてしまった。最悪の事態が起きてしまった。
「くっそ…、」
必死に逃げるも相手は吸血鬼。暗殺で鍛えていても複数で来られると無理だ。
私には、武器がない、吸血鬼を殺すための武器が。
何故吸血鬼に追われているのか、遡ること一時間前
夜の散歩へと繰り出せばパトロール中の真昼と鉄、怠惰、傲慢に出会い、簡単な護身術を教えてやったのだ。
これで灰塵、さばきやすくなったな、と鉄と真昼が言っていた。
これを知ったらせっかく増やしたのに、てべルキアが怒りそうね。
「じゃあそろそろ私も帰るわね」
「付き合ってくれてありがとうな！A！」
時間も時間だし、そろそろ帰らなきゃ、と思い、真昼達と別れ、帰路を辿る。
そうだ、近道しよ
そう思い裏路地へと入り、薄暗い道を歩いていれば
「そこのお嬢さん、こんな夜道に1人なんて、不用心だね」
気配はしていたけど、まさか通り魔に会うとは。
おじさんが私めがけて投げたナイフが私の頬を掠め、血がたれる。
腹いせに叩きのめしておく。
「これは久しぶりの上玉じゃないか？」
「美味そうな匂いだな」
「おい、お前ら俺らが先に見つけたんだぞ」
5人、か。
話の内容からして吸血鬼かな。
「とりあえず捕まえるぞ話はそれからだ」
「……ふざけないでくれる？どこの下位か知らないけど、殺すわよ」
今の私は機嫌が悪い。その気になれば5人くらいまとめて相手出来る。
とはいえど、相手は吸血鬼。
吸血鬼を殺すための武器もないのに吸血鬼５人の相手は骨が折れる。
「どこの家の出だか知らねぇが、武器を持ってねぇ魔術師だ。こっちのが有利だろ。」
まって、魔術師、て何それ。
パァンッと銃声が聞こえる。
しまった、と思った時には遅く、右脇腹を銃弾が貫通した。
「っ、」
重症、てわけでもないが、狙撃がどこにいるか分からない今は、一旦逃げる方がいい。
背後に注意を向けながら一旦、奥へと走る。
「逃がさねぇよ…！」
上から降ってくる弾丸を避けつつ向こうからの攻撃も回避すり。
じわじわと血が滲むと同時に痛みが酷くなる。
「数が多い、な…」
がくん、と身体の力が抜け、こけそうになった。
まさか、時間が…
「捕まえた」
「っ、離せ、」
その隙をつかれ、腕を拘束される。
「まずは味見だな」
ベロ、と頬を流れる血を舐め取られ鳥肌がたつ。
「お前、ずるいぞ、俺らにもよこせ」
「…っ椿、」
不意に聞こえたその声は
「揃ってるね」
椿ではなかった。
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作者名：霧島沙羅 | 作成日時：2017年6月2日 14時
