トリップ３０ ページ37
シャムさんと吸血鬼の勉強をして
べルキアの手品を見て
桜哉と音楽を聞いて
ヒガンさんとイタリアの美味しいお店について語り
オトギリと夕食の支度をして
椿のブラッシングしながら一緒にテレビ見て
そんな日々が、これからも続くのだと思っていた。
唐突に来た1本の電話。
あれを取らなければまた、同じように日々を過ごしていけたのだろうか…。
「Aー！アイス食べよォ☆」
「今は、いいや」
気分じゃないかな、と呟けば今度はオトギリが次は私です、とやって来た。
「一緒に…お蕎麦食べましょう？A何も食べないの…困ります」
「ごめんね、オトギリ。一人で食べて？食べたくない…」
ずずっと一人でお蕎麦をたべるオトギリ。
昨日の夜から飲まず食わずでもう夕方だ。
今度は桜哉きた。
「裂けるチーズを卵焼きでまいたヤツ食うか？」
「…どうでもいいし、裂けるチーズは普通に食べたい」
「ならこれは？」
ヒガンさんが何か持ってきた。
お皿の上にボールが中は被せてあり見えない。
てか、服装的にもオシャレなレストランの店員さんだよヒガンさん…。
「おじさん久しぶりに料理したよ〜。懐かしいかな、と思って」
たはは、と笑うヒガンさん。パカ、と開ければボンゴレロッソが湯気を立てていた。
「ボンゴレ･ロッソ。おじさん風だからシチリア育ちのお嬢ちゃんの口にあうかわらな「たべる。ちょうだい」」
かた、とみんなで食卓を囲む様の机に置かれ
「おいで？A」
と呼ばれる。
「お昼にはちょっと遅いけど、おじさんの分も作ったからね。」
そう言ってオトギリの隣にお皿を置く。
「ん」
席につき、ヒガンさんにお礼を言い、パスタを口に運ぶ。
「どうかな」
「……美味しい」
懐かしい味…。
「ヴァリアーの幹部になった時にね、ルッス姉さんがお祝いだから、て作ってくてたことがあるの」
食べながら、ぽつりぽつり、と
「ヴァリアーの皆の声をね、聞いたとき」
思いを吐き出すように
「皆に会いたいな、て帰りたいな、て思ったけど」
涙とともに
「それ以上に、みんなと、離れたくないな、て思ったんだ。」
言葉が溢れ出す。
「おじさん達も、椿も、お嬢ちゃんと同じ気持ちだと思うよ？」
「そう、なのかな…」
帰るべきだ、と椿は言っていた。
確かに、帰ってやらなければならない事がたくさんある
「どうしたら、いいのかな…私は…」
ヒガンさんはゆっくり考えたらいい、と言って頭を撫でてくれた。
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作者名：霧島沙羅 | 作成日時：2017年6月2日 14時
