トリップ２６ ページ31
【ジェジェside】
A・エグランティーナ。
色々調べたが情報が一切出てこなかった少女。
このご時世、必ずといっていいほど程何かしらの情報が得られる世界で全く出てこなかった。
偽名かもしれない、と御国が言っていたが…。
「考え事？」
ふふ、と目の前で微笑む少女に、目を細めた。
銃口を向ければ嬉々とした表情を浮かべ、あてようにも全て避けられてしまう。
あたるかあたらないか、スレスレのところで避けて楽しんでいる。
「おっと…危ない」
足元目掛けて両手から発砲すれば高く跳躍し、背後に飛ぶ少女。
身体能力は高い
「げっ」
が、いくら気配を消しても、その"血の匂い"は消えない。
背後に銃口を向け気にせず撃ち込めば楽しそうな笑い声が聞こえる。
…気味が悪い。
ちらっと見れば危なかったー、と楽しそうに笑う少女の姿。
「……何故、近くで…避ける…」
本気で、と言われたからにはその気でやっているが下手すれば命を落としかねない、というのに
「今は、練習も兼ねてるけど、あたると思ったのに、当たらなかった時、相手が絶望するんだよね。」
クルクルとナイフをお手玉のように投げながら、どこか、遠い目をして答える。
「殺せると思ったのに、て。」
薄らと笑みを浮かべる少女に、御国の武器で釣り上げれば誰よりも重く感じるのではないか、といった考えが浮かぶ。
「部隊に入るまでは、そうしてた」
今はしてないよ？というが、どこまで本当なのやら。
少女からは、"血の匂い"がする。
ナイフや、靴から動く度に、血の匂いがするのだ。
鮮血ではなく、"乾いた血の匂い"。
どれだけ殺れば、こんなに匂いが染み付くのだろうか…。
距離を詰めてくる少女の足元目掛けて発砲した時
「……っ」
ちら、と見えた首筋に、二箇所、吸血された痕が見えた。
「あ、お兄さん、意外と綺麗な顔してるのね…」
気がついた時には紙袋を少し上げ、下からのぞき込まれていた。
「〜っ！！」
ばっと離れ、落ちてしまった紙袋を回収する。
何度も見慣れた傷跡が二箇所も…。
「…ジェジェ」
御国に呼ばれそばによる。
「…何かあったのか？」
顔色が悪い、と見えなはずなのにあててくるのは長年共にいるからなのか、それとも…。
考えるより今は報告が先だ。
「…噛まれた、跡があった…」
「……それでか、分かった」
お疲れ、と呟き、兄である"古き良き時代の忘れ者"にべぇ、と舌を出す姿にため息をつく。
どうしてこんなにも子供なのやら…。
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作者名：霧島沙羅 | 作成日時：2017年6月2日 14時
