トリップ２１ ページ26
重たい体を起こせば文化祭の当日で、もう昼過ぎだった。
「行きたかったな…文化祭…」
「大丈夫か？A…」
ちら、と隣を見ればタオルを絞っている桜哉。
「桜哉…」
「まだ寝てろ…しんどいんだろ？」
ひんやりと冷たいタオルが額にのる。
「ありがとう…桜哉は、大丈夫なの？」
顔色が悪いよ？と言えば俯いてしまい、顔が見えない。
「桜哉？」
「…真昼と、お別れしてきた」
ぽつり、と呟かれた言葉に
「…そっか」
なんと声をかけたらいいの分からなくて
「桜哉」
体を起こして、そっと桜哉を抱きしめる。
「っ、」
桜哉が息を呑むのがわかった。
ぽんぽん、とあやす様にリズムよく、背中を叩いてやれば肩にポタリ、と雫が落ちる。
「ん、いい子…」
よく頑張ったね、と呟けばこくり、と小さく頷く桜哉。
椿がやりたいことの意味を知っているだけに、なんとも言えない気持ちになる。
「…ごめん、ありがとう…A…」
涙を拭いながら、桜哉が顔を上げる。
ちょっと落ち着いた、と力なく笑う桜哉に、胸が痛む。
「…桜哉「椿さんたち、呼んでくる」」
言おうとした言葉を飲み込み、お願い、と呟く。
彼の背中が、聞きたくない、と言っていたから。
しばらくすると椿が飛んできて
助けを求めれば
桜哉が助けに来てくれて
椿を引っ剥がした桜哉は
いつもと変わらなくて
少しだけよかった、と思いながら布団に包まる。
「ほら、Aも眠たいみたいですし、出ていきましょう」
「！？桜哉いつの間にAのこと呼び捨てになったの！？」
「…桜哉、そのうるさい狐、黙られて」
ぼそっと呟くと
「りょーかい。ゆっくりやすめよA」
「呼びタメ！？呼びタメなの！？」
「黙れくそ狐」
「A酷い！！」
いやー、と言いながら桜哉に引きずられていく椿。
その後椿の悲鳴が聞こえたのは言うまでもない。
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作者名：霧島沙羅 | 作成日時：2017年6月2日 14時
