わんこ系とにゃんこ系【男主】

わんわん ２９ ページ29

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目を瞑っても、痛みなどは感じられない。
ただ、耳元に彼女の悲痛な叫びが響くだけだった。


目を開けば呆れたように彼女の手を止める人物。



『 ………志麻 』
「 あほやわほんま。何一人で突撃しとんねん 」
『 ごめん、』

「 っ邪魔しないでよ！！！！！殺させて！！！先輩を私のモノにさせてよ！！！！！！！！！」
「 …………うっさい餓鬼は絡んでくるし最悪やな 」


せんせーとはまた違う綺麗な顔をした志麻先生の顔が歪む。
ゴミを見るような目で彼女を見つめ、ふっと嘲笑う。
学校で見る時とは全く違う。

怖かった。


「 早く。一ノ瀬くん連れて行きや 」
『 ………大丈夫か？ 』
「 俺を誰やと思ってんねんアホ 」
『 ………悪い、頼むわ 』
「 任せとき 」


せんせーは彼にそう言って頼むと、即座に俺の方に駆け寄ってきた。
…………また、そんな顔するんだから。


『 大丈夫？ 』
「 うん、せんせーは？ 」
『 俺は大丈夫。行こ 』



なんて説得力の無い痛々しい腕で引かれ、急いでその場を去った。
その手は、少し震えていた。





有無言わず暫く腕を引かれていると、
目の前に一件の家が見えた。


表には西条、という表札が出ていてせんせーは何の前振りも無く、その家に入っていくのだっだ。





＿＿＿＿＿ガタンっ



『 ………ごめん 』


入って早々に玄関で抱き締められ、思考が停止する。
自分の白い服にちょっとだけ血が付いているのを確認して、更に不安になった。

俺のせいでせんせーに怪我させて、迷惑かけて、嫌な思いまでさせてしまった。



「 ……なん、でせんせーが謝るの 」
『 …………俺のせいだから。俺があの時彼奴の気持ちにも気づかないで最低な事したから、幸がお前を狙って、一ノ瀬を危険な目に合わせた、っ………ごめん、』


抱き締められているからこそ分かるせんせーの震える体はいつもより弱々しく、俺まで涙を誘われそうになった。


けど、ダメ。
ここで俺が泣いたらせんせーを安心させれないから。


大丈夫だよって言えないから。


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