2-㉒ ページ22
｢それは凪彦のことが好きだからだよ｣
椅子に座っていた喜八郎が抑揚のない声で話し出した。
｢すき？……俺のどこが？｣
｢それは知らないけど、良いじゃない別に好みの顔を教えるくらい。僕の顔は嫌いなの？｣
｢え？｣
｢もちろん好きだよね〜。僕の顔かわいいし｣
喜八郎は凪彦の顔をじっと見た。その視線に凪彦は思わずたじろいだ。コイツらが何を求めているのか正直分かりたくない。
なんなんだ一体。どうしてみんな私をそんな目で見るんだ。
好みとか好みじゃないとか分からない。売れる売れないは分かるけれど。
再び前のめりに近ずいてくる二人から一歩後ろに下がって離れる。二人の視線から逃げるように目線を逸らしたら、ちょうどいいタイミングで食堂前の廊下にこちらに向かってくる影が目に入る。
あ、彼は……。そう思って凪彦は口を開いた。
｢そうだな、俺が好きなのは｣
その人物が食堂に入ってくると同時に彼の肩を抱き寄せる。
竹谷八左ヱ門が驚いた顔をした。体を引き寄せられた萌黄の忍装束を着た彼はたった今食堂へ入ってきたのだから何が何だか分からないでいる。
凪彦は空いている右手で彼のほっぺたをもにもに挟んで弄ぶ。
｢伊賀崎孫兵の顔かな｣
大きなおめめをクリクリさせた伊賀崎孫兵が顔を上げる。
｢なんですか？急に｣
凪彦から生贄にされたことに気がついていない彼はポカンとしたまま凪彦を見つめ返した。胸元から見える蝮のジュンコも一緒になって頭を傾げる。
｢いんや、なんでもないさ。今から昼か？｣
｢はい｣
｢よし、俺が奢ってやるよ｣
｢はあ｣
少し嫌そうな顔をした孫兵は凪彦に肩を引き寄せられながらカウンターまで連れていかれた。
凪彦はおばちゃんに食券を二枚渡して、先程出来たばかりのおにぎりを受け取った。
何もただ生贄にしようという理由で孫兵を選んだわけじゃない。下級生を選んでおけば火種は小さくなるだろうという点と彼は人間よりも毒虫達の方が好きだと聞いているので彼と争おうと思う気持ちも削がれるんじゃないかと思ったからだ。
次いでに顔も良かったから孫兵を選んだ。
ここに孫兵の顔を批判する人間は居ないだろう。
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墺士(プロフ) - 夜ながながさん» コメントありがとうございます！応援よろしくお願いします🤍 (12月11日 13時) (
レス) id: 6957722078 (このIDを非表示/違反報告)
夜ながなが(プロフ) - 続編おめでとうございます！そしてありがとうございます！とても大好きな作品です🫶🏻💖これからも応援しています！ (12月11日 12時) (レス) id: ebecf52502 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：墺士 | 作成日時：2023年12月11日 10時
