74.死にびたり ページ47
人のいない都心の道路を走って見えた景色に俺はただそう零した。聞こえるわけのない声量で。
自分の存在を証明するために俺は再度走り出した。
それに気付いたのか夜蛾学長の前に立っている老人、楽巌寺学長が俺を見た。
俺はあの人の目が苦手だ。
嫌いなんじゃない。苦手だ。
言ってしまえば”怖い”
人の暗い部分を映し出したスクリーンのようなあの目はどうしても直視出来ない。悟も、夜蛾学長もどうしても話せるんだろう。
悟に関してはどうして余裕を持ってあの人と会話できるのか。
どうしても俺はあの人と話してると目を逸らしてしまう。
でも今はそんな人がどうでも良くなるくらい無防備に走り出してそのまま掛け転ぶように夜蛾学長の横に並んだ。
楽巌寺学長がギターを構えたがそんなことはどうでもよかった。
血だらけで壁に寄り掛かる夜蛾学長に叫ぶようにして声をかける。
『学長!!』
「…Aか。思い出したか?それとも、知りたくなったか?」
死は怖くないのか。
夜蛾学長は微笑んでいる。
もしかしたらこうなっているかもしれない。今は渋谷事変。こうなっていない確信なんて無かったのに。俺は覚悟して来たはずなのに。
いざ前になると言葉は出ない。
『俺が来ると殆どの仲間が死ぬんだ。呪いか?これは』
そういえば夜蛾学長は愉快そうに笑った。
「お前も冗談が上手くなったな」
『笑えないけどね』
「1つ、言えるとすれば」
顔は相変わらず安らかで心の底から死を受けいれている様な。記憶のことについてだろう。俺は次の言葉を待った。
・
大きな影が背後に来た時俺は振り向かなかった。分かっていた。
「何故戦わん。儂が憎くないのか」
楽巌寺学長がそう言った。
大きくてモフモフの手が俺の前にいる夜蛾学長に優しく触れた。
「
「アンタまさみちと仲悪くなかったもんな。どーせ上に命令されてやっただけだろ。俺にとっちゃアンタは落ちてるナイフみたいなもんさ」
パンダ先輩の震える手が馬鹿みたいに顔をクシャクシャにして泣く俺の頭を撫でた。
「だがこれだけは覚えておけ」
「パンダだって泣くんだ」
この死にただ今は静かに浸りたい。
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せみのぬけがら(プロフ) - ソラさん» ほんとだっ!!わざわざありがとうございます(^^) (2021年2月12日 18時) (レス) id: b5181500a7 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 48、49(?)話らへんで、硝子さんが、梢子さんになってると思います。間違ってたらすみません。 (2021年2月11日 16時) (レス) id: 9410ab3aed (このIDを非表示/違反報告)
せみのぬけがら(プロフ) - 羅飛さん» このネタ伝わんなかったらどうしよ・・・って思ってました笑笑わざわざ、コメント寄せてくれて助かります。ありがとうございます! (2020年11月19日 0時) (レス) id: b5181500a7 (このIDを非表示/違反報告)
羅飛 - 41話の「今日から(名前)は僕のダーリンだ!」で顔がめっちゃにやけてるのが自分でもわかりましt((いつも楽しく読ませていただいてます。更新無理せず頑張ってください! (2020年11月18日 23時) (レス) id: ece54e7d40 (このIDを非表示/違反報告)
せみのぬけがら(プロフ) - 東明さん» きゃー!ありがとうございますm(__)m頑張らない程度に頑張ります笑笑 (2020年11月14日 18時) (レス) id: b5181500a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えすめ | 作成日時:2020年11月13日 22時