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「やっぱり知らなかったんですね」
「やっぱりって……何がですか？」
「今日は十三夜と言ってね、十五夜と同じようにお月見をする風習があるんですよ」
「へぇ〜。そうなんですか」
暖かいココアを飲みながらエーミール先生の特別授業が始まる。
「栗名月や豆名月といった別名があって、月見団子ではなくて栗や豆を備えるんですよ。ちなみに十五夜は芋名月とも言うんです。十三夜は……」
エーミール先生による私だけの授業。今日この瞬間のみ開講のエーミール先生の説明はとても分かりやすく、するすると頭に入った。月に纏わる話を地学的な側面も文化的な側面も織り交ぜて話す先生はやっぱり素敵だ。学校では教えて貰えない知識を忘れないようになるべく多く脳に刻みつける。チャイムに邪魔される事のないそれは永遠に続く夢のように感じた。
「はっ、すみません……すっかり長くなってしまいましたね……」
「いえ、とても楽しかったです」
「それは良かった。誘った甲斐がありました」
もうすっかり冷えた空き缶をそっと両手で包む。エーミール先生はまだ少し残っていたらしく、すでに冷めきっているであろうココアを一気に飲み干した。
帰りましょうかと立ち上がるエーミール先生。ああ、今日が終わってしまう。お手伝いのご褒美はココア一缶とココア一缶分の授業。それで十分すぎるはずなのに強欲な心は続きを願った。
「あ、そういえば、まだ言ってませんでしたね」
「何をですか？」
「十五夜と十三夜、片方しか月見をしないのは片見月といって縁起が悪いとされているんですよ」
「え……あっ、だから今日誘ってくれたんですか……？」
「はい。それもあります」
それ"も"？
たった一字、されど一字。大きく意味を変えてしまう助詞が気になって追求すればエーミール先生は少し慌てたような気がした。けれどすぐに「本当はお手伝いしてもらうのが目的です」なんて笑われたので、やっぱり気のせいかも。
とにかく二度目のお月見もこうして無事に終わりを迎えた。
教師に恋をするなんて間違ってる。それでもエーミール先生が私のことを突き放さないうちは今の関係に甘えてしまおうと思った。
だって、いくら優しいとはいえ一生徒の縁起まで気にするだろうか。教えればそれでいいものを態々共に月見をするだろうか。
これが希望的観測だったとしてもそれでいい。
帰路、エーミール先生の隣から見上げる月は稲穂を連想させる、暖かい金色をしていた。
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ベルギーチョコ(プロフ) - 青条さん» レスありがとうございます!!!まさかレスが来るとは思ってなかったのでまだまだ消滅しないで頑張ります…!! (2021年12月24日 10時) (
レス) id: 6938e81241 (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - ベルギーチョコさん» ありがとうございます！自己満足で始めたものですが感想貰えるとやはりモチベーションがグッとあがりますね！今後も更新していく予定なのでまだ消滅しないでください〜笑 (2021年12月24日 9時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
ベルギーチョコ(プロフ) - emさん推しには堪らぬ…！こんな素敵な作品を作って下さり本当にありがとうございます(消滅) (2021年12月24日 6時) (レス) @page29 id: a8b18d6813 (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - 暇人な名無し__低浮上ガチ勢さん» 今の今までコメントに気が付かず……約１ヶ月遅れの返信になってしまいました、すみません！！感想凄く励みになります！このお話"も"って言って貰えてとっても嬉しいです！これからも頑張っていきますので気長に応援してくださると嬉しいです(*^^*) (2021年8月9日 21時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
暇人な名無し__低浮上ガチ勢(プロフ) - ｳﾜｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ七夕のお話めっちゃ好きです...すごい、甘酸っぱい感じで、ほんと、好きです...(語彙力)いや、このお話"も"なんですけどね！？全部のお話がほんとに好きなんです...頑張ってください！応援してます！ (2021年7月8日 15時) (レス) id: d7b6c8461a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青条 | 作成日時：2020年6月26日 14時
