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運転は存外神経を使う。見えない場所にまで神経を研ぎ澄ませて、尚且つ三半規管の弱い人にも優しい揺れの少ない運転となると一体どれだけの気遣いがあるのか私には計り知れない。エミさんだって疲れてるに決まってるのに、私ばかり疲れたら寝るなんてあまりにも恩知らずで恥知らずだ。眠気を追い出すようにほっぺたを少し強めに叩いてそのまま抓る。
「コーヒー飲む？」
「あ、じゃあいただきます。エミさんの分も開けますか？」
「お願いします」
コンビニの袋に入れられた缶を手に取って、少し力の戻ってきた指をプルタブに引っ掛ける。
カコン。
勢い余った手の中でアイスコーヒーがちゃぷと音をたてる。私の手元から香ばしい匂いが車中へ広がって、思い込みも甚だしいけどそれだけで少し目が覚めた気がした。
差し出すとエミさんは前を見たまま左手を伸ばす。碌に焦点を合わせていないエミさんの手が一度私の手を包み、なぞるように上部へ移動して缶を抜き取っていく。右手はハンドルに、視線は前に。そのまま左手だけを傾けてコーヒーを飲む彼はいつもの10割増にかっこよく見えた。
*
決意をして数分。私は再び眠気と格闘していた。一度引いて戻ってきた睡魔の波は津波のように抗い難く、いよいよ限界が近くなってきているのがはっきりとわかる。どうしてエミさんの運転はこんなにも眠くなるのだろう。急ブレーキも急発進もない丁寧な運転だからだろうか。あと、エミさんの隣は妙に安心するから、それも眠気に影響している気がした。さっき寝ないと誓ったばかりなのにと自分の意思の弱さには嫌気が差すけれど、それすらも微睡みの中では輪郭が曖昧だった。
「…………」
「ふふ……着いたら起こせばええ？」
「ぅ……………………はい、すみません」
遠のいていく意識にも、寝かしつけるような柔らかい声にも、抗う術はなかった。膝の上で組んでいた指が緩んで手は力なく横に落ちる。
「おやすみなさい」
煙草で焼けた低い声は鼓膜から脳へゆっくりと浸透した。もうほとんど思い通りにならない唇で返したおやすみなさいは無事彼の耳へ届いたのだろうか。真っ赤な光が瞼を貫通して眉を顰めると、何も言わないのにサンバイザーが下ろされる。全身を浸すコーヒーと煙草の交じった決して良いとは言えない匂いが、今は何ものにも変え難い安寧の象徴だった。
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ベルギーチョコ(プロフ) - 青条さん» レスありがとうございます!!!まさかレスが来るとは思ってなかったのでまだまだ消滅しないで頑張ります…!! (2021年12月24日 10時) (
レス) id: 6938e81241 (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - ベルギーチョコさん» ありがとうございます！自己満足で始めたものですが感想貰えるとやはりモチベーションがグッとあがりますね！今後も更新していく予定なのでまだ消滅しないでください〜笑 (2021年12月24日 9時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
ベルギーチョコ(プロフ) - emさん推しには堪らぬ…！こんな素敵な作品を作って下さり本当にありがとうございます(消滅) (2021年12月24日 6時) (レス) @page29 id: a8b18d6813 (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - 暇人な名無し__低浮上ガチ勢さん» 今の今までコメントに気が付かず……約１ヶ月遅れの返信になってしまいました、すみません！！感想凄く励みになります！このお話"も"って言って貰えてとっても嬉しいです！これからも頑張っていきますので気長に応援してくださると嬉しいです(*^^*) (2021年8月9日 21時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
暇人な名無し__低浮上ガチ勢(プロフ) - ｳﾜｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ七夕のお話めっちゃ好きです...すごい、甘酸っぱい感じで、ほんと、好きです...(語彙力)いや、このお話"も"なんですけどね！？全部のお話がほんとに好きなんです...頑張ってください！応援してます！ (2021年7月8日 15時) (レス) id: d7b6c8461a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青条 | 作成日時：2020年6月26日 14時
