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バンバンバンッ！
「ひっ…………！？」
耳を弄するような音を規則正しく撃ち込まれ、カランカランと金属片が床を跳ねる。部屋の外にまで大きく響いた音は廊下の奥へ吸い込まれて消えていった。音を聞きつけて誰かが来てもよさそうなものだが、辺りは不気味なほどに静まりかえり、耳に残った残響とやたら早い心拍数だけが私の聴覚を占めた。
「大丈夫ですよ。いまメインホールはミラーボールが煌々と輝き騒音渦巻く混沌の世界ですから。誰も気づきすらしません」
そういうことじゃないんです。形にしようと思った声はすきま風になって、体を支えていた足は恐怖にくずおれた。ただぶら下がっているだけの鉄くずと化した鍵をエーミールさんは放り投げる。鎖を解き扉を開けるとまたうるさい金属音が辺りを支配した。
「さて、どうします？」
「でま、出ます……………………え、いいんですか？」
「好きにしたらええと思いますよ」
腰を抜かした私の目の前に屈んで、エーミールさんは細い金属を器用に操った。数秒、カチリと久しく聞いていない音がして、枷が落ちる。久しぶりに見た手首は日焼けをしておらず真っ白だった。未だ震える足で何とか立って、もう一度「出ます」と頷く。
「じゃあ、今夜最後のイタズラです」
言うが早いか、エーミールさんは再びトリガーを引いた。この部屋唯一の窓から見えるカシオペアにヒビが入って、綺麗な音と共に、より澄んだ姿で現れる。元々優美に輝いていた月はさらにその神秘性を増して網膜をツンと刺激した。
背の高いエーミールさんのエスコートを受けて、届かなかった窓の外に体を出す。久しぶりに吸った外の空気は夏と秋の混じった匂いがして、牢の中とは桁違いの情報量に動きがとまる。ずっと望んでいた自由は果てなくて、心許なくて、前にも後ろにも進めなくなりそうだった。
「行く宛てがないなら付いてきますか？」
罪のない人が困っているのなら、助けたいですから。そう言って一度離れた手が目の前に差し出される。私は半ば無意識にそれを取った。
「お願いしても、いいですか……？」
モノクルの先のオパールが星明かりを集積してキラリと揺れる。その先の月白の瞳は自分の知る何よりも優しく、温かみに満ちていた。
檻を出るまで、空がこんなに広いことを忘れてしまっていた。広い空の下、今一度大きく深呼吸する。
多くの星が満月の光に呑まれ、文字通り月前の星となっている。そんな中、北空のWだけは不敵に輝いていた。
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ベルギーチョコ(プロフ) - 青条さん» レスありがとうございます!!!まさかレスが来るとは思ってなかったのでまだまだ消滅しないで頑張ります…!! (2021年12月24日 10時) (
レス) id: 6938e81241 (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - ベルギーチョコさん» ありがとうございます！自己満足で始めたものですが感想貰えるとやはりモチベーションがグッとあがりますね！今後も更新していく予定なのでまだ消滅しないでください〜笑 (2021年12月24日 9時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
ベルギーチョコ(プロフ) - emさん推しには堪らぬ…！こんな素敵な作品を作って下さり本当にありがとうございます(消滅) (2021年12月24日 6時) (レス) @page29 id: a8b18d6813 (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - 暇人な名無し__低浮上ガチ勢さん» 今の今までコメントに気が付かず……約１ヶ月遅れの返信になってしまいました、すみません！！感想凄く励みになります！このお話"も"って言って貰えてとっても嬉しいです！これからも頑張っていきますので気長に応援してくださると嬉しいです(*^^*) (2021年8月9日 21時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
暇人な名無し__低浮上ガチ勢(プロフ) - ｳﾜｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ七夕のお話めっちゃ好きです...すごい、甘酸っぱい感じで、ほんと、好きです...(語彙力)いや、このお話"も"なんですけどね！？全部のお話がほんとに好きなんです...頑張ってください！応援してます！ (2021年7月8日 15時) (レス) id: d7b6c8461a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青条 | 作成日時：2020年6月26日 14時
