雷門の女神2 (ページ26)

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海風はスタジアムを後にすると、花屋によって綺麗な花を何本か買った

足を向けたのは、自分が通っていた病院だ

病棟の方へ向かい、ある病室の前に立つ

ゆっくりとドアを開けると、『失礼します』と丁寧に言う

『初めましてだな、茜さん』

静かに病室のドアを閉めると、海風はサイドテーブルの上に置かれたクマのぬいぐるみの近くに、花束を置いた

『突然来てすまない。私は海風亜真音と言う
雷門中のサッカー部だ』

自己紹介をしても、茜はなんの反応を示さない

『初対面が、病室にくるものではなかったな…』

頬をかいた海風は、花束を茜に差し出した

『どの花が好きなのかわからなくてな…。適当に見繕ってきたんだが、気に入らなければ捨ててもらって構わないよ』

茜は静かに手を伸ばし、花束を受け取り胸に引き寄せた

『気に、入ってくれたと受け取っていいのか…？』

わからないが、嫌いという感情は見えない

いや、感情すら見えない

『…今度は、好きな花を持ってくるよ…
何がいいか、教えてくれると助かるよ』

海風は立ち上がると、『あ、そうだ』とポケットから何かを取り出す

『どんな病気なのかわからないが、コレを君にあげるよ』

そう言って取り出したのは、翡翠の髪留めだった

『お守りがわりに、使ってくれ
もちろん、気に入らなければ捨ててもらって構わないよ』

茜に差し出した髪留めは、キラキラと光っている

茜はチラリと髪留めを見ると、また視線を戻した

それを確認した海風は『ここに置いておくよ』と、クマのぬいぐるみの隣に置いた

『じゃあ、また来るよ
今度は、君の好きな花を持ってくるからね』

海風は帽子を被り直すと、病室のドアを開けて出て行った

茜はチラリと海風を見た後、花束をまた抱きしめる

病室を出た海風は、廊下を歩きながらエレベーターの方へと足を向けていた

(灰崎の復讐と、アレスの天秤、そして謎の女の子…
このフットボールフロンティアの裏で何が行われているというのだ…)