76話 染み渡る黒 ページ8
やっと涙が引っ込んで目元が腫れぼったく感じるのをよそに、貸してもらった上着を返してシンと共に動かない地下鉄の電車に戻った
アレックスたち囮班が戻ってきたところで「このバカ！」という怒号が飛んできた
「なぜ仲間を一箇所に集めた!! この人数で地下に立て篭もるのは、自 殺行為だぞ!! なぜわからない！」
「ここが奴らに見つかるってのか？そんなバカな！」
「マンハッタンの地下が“モグラの巣”だということは、調べればすぐにわかる！」
「！」
「すぐにここを脱出するんだ！ありったけの武器で武装しろ!!」
『アッシュ…』
体力もまだ回復していない身体でそう力強く怒鳴りつけるアッシュに驚きながらも、アッシュの的確な指示にみんなが動き始める
いよいよ本格的に移動をし始める頃、私は空になった弾倉が装填されていた銃を腰から取り出した
(真冬…)
お願い…どうか、みんなを守って
「来瞳」
『！』
「これを…」
『これ…』
「弾倉と予備の弾倉だ」
『どうして…』
「…身を守ってもらうためだ」
差し出された弾倉4つを受け取り、私は『ねえ』とアッシュに声をかけた
『顔色、悪いよ』
「！」
『大丈夫？』
「………まぁな。じじいの邸の食いもんは食えた代物じゃなかったからな…お前の作るメシが恋しかったよ」
『…強がりを言わないでよ…本当は具合が悪いんでしょ？
私には本当のことを言ってよ』
「………ここひと月ばかりものが食えなくてな。水と点滴だけで過ごしてたんだ」
『えっ…でも、それじゃあ』
「大丈夫だ。そのぐらいじゃ俺はへばらねぇよ」
『………』
そう言って笑うアッシュは、私の手の中にある銃に触れた
「二度とこいつを持たせたくなかった。すまない」
『謝らないでよ。日本人お得意のお株を奪う気？』
持っていた銃の空の弾倉を落とし、新しい弾倉を装填する
『行こう、アッシュ』
軽く微笑む彼に私も応えるように笑うと「うわあああ！」と言う声と銃声が聞こえてきた
「たっ、大変だ！追っ手が！」
「わあああ！」
『ヒェーロン、クアマン!!』
「来瞳、出てくるなよ!!」
「しゃがんでろ！」
火花が散る狭い地下道で、ケインが仲間達を下がらせてかがみこんでいる
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2023年4月17日 8時
