36-6 ページ44
仕方ないから、お箸の反対側を使って食べることにしたら「残念、間接キスできなかったな」と言うから、それが変なとこに入ってむせたのはウチのせいやない
『豪炎寺くん、実はイジワルやろ』
「ああ、今更か」
『ひどい…』
しれっとフランクフルトを食べながらそう言う豪炎寺くんに、ウチはもらったフランクフルトを食べる
ジュワッと肉汁が溢れ出てくる。唇に落ちた脂を舌で舐めると「ティッシュいるか？」と聞かれて首を横に振る
『んーん、平気』
「使うなら言ってくれ」
『ん、ほぉーひに…んっ』
「ケチャップついたぞ」
『え、うっそ…どこどこ？』
がぶりとかぶりついた途端に肉汁まで溢れてきたから慌てて紙コップの中に入れてもぐもぐすると、豪炎寺くんにケチャップついてると言われてどこかと探そうとする
「ああ、違う…反対」
『ん〜？』
「ったく…じっとしろ」
『んむっ』
ウチが触ってた反対側の口の端に指で拭ってくれた豪炎寺くん
『ああ、ありがと…』
お礼を言うために顔を向けたら、拭ってついたケチャップをペロリと舐めとった
「…どうした？」
『もういやや〜…』
「？」
『それこそティッシュ使えばええやんか…』
「ああ、少し意識してもらおうと思ったからな」
『意識？』
「あぁ」
最後の一口というフランクフルトを食べた豪炎寺くんは、ゴミをゴミ箱に捨てた
『意識、意識とは』
同じくあと一口というフランクフルトを口に入れようとしたら、食べ終えた豪炎寺くんが「好きだからな」と言う
『え？』
豪炎寺くんの言葉に反応したウチが横を向いたら、頬杖をついてこっちを少し頬を染めて見てくる豪炎寺くんがおった
「好きな人に意識して欲しいから」
『……えっ？』
お祭りの音が大きくて、会話だって自然と声が大きくなるのに
豪炎寺くんのその声は、とても穏やかで静かで、いつも通り話してる声で
普通ならかき消されてまいそうやのに
今、ウチの耳に、はっきりと
届いた
『えっ…』
ﾄﾞｫﾝ
『！』
「花火か…」
夜空に打ち上がった花火に釣られて空を見上げると、そこには色鮮やかな花火がある
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2023年3月1日 11時
