36話 夏祭り ページ39
ー夕方ー
パリッとポテトチップスを食べながらテレビを観てると「あらあら〜」と母さんが楽しそうな声を上げた
『母さん？』
床の間にいる母さんのところに行くと、そこには青色の浴衣を着ているフィディオがいた
「相変わらず、なんでも似合うわねぇ」
「あ、理英！どう？似合う？」
『はいはい、似合ってます似合ってます』
「冷たいなぁ…」
『夏祭り行くの？』
「あぁ。マモルたちが誘ってくれたからね。帰るまでに、いろいろと思い出を作ろうと思って」
『そっか。夏休み中だけだっけ』
「うん」
帯をしっかりと結んで調整するフィディオの支度から「理英も着ましょうよ」と楽しそうにする母さんに腕を引かれた
『え、でも』
「いいから！さ、着替えましょ！フィディオくん、リビングで待っててちょうだいね〜」
「はい」
『え、母さん、ちょっ』
「どれがいいかしらね〜」
女物の浴衣をバサーと出して、いろいろとウチに合わせてくる母さん
「どの色がいいとかある？」
『なんでもええよ…』
「赤なんてどう？似合いそうよ」
『派手やん…』
「じゃあ、フィディオくんとお揃いにする？」
『え、それはあかんやろ…』
「も〜。どれがいいの？」
『んー…』
広げられた浴衣を見比べていく
ピンク、水色、青、赤、黄色
どれもこれもなんかしっくりこーへん
「しっくりこないなら、イメージしてみたらどう？」
『イメージ？』
「そうね〜…たとえば、プレゼントしたい人に似合う色はなにかな〜とか、これを着て誰と会おうかなって…
そうすれば、イメージは浮かぶんじゃないかしら？」
『…………』
「あら、決まったの？」
『母さん、これ…これがいい！』
「えぇ、素敵な色ね」
オレンジ色の浴衣
「オレンジだなんて。いつもなら選ばないのに、誰かのイメージカラーなのかしら」
『……』
「炎の色だから…豪炎寺くんとか？」
『母さんっ』
「ふふふ、そうね。余計な詮索はしないでおきますよ」
クスクス笑って着付けをしてくれる母さんにウチは、熱くなった顔を背けるように横にプイッと向いた
「さあさあ、できましたよ」
「わあ、素敵だよ、理英！これなら、豪炎寺もイチコロだね！」
『フィディオーッ!!』
「あらあら〜」
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2023年3月1日 11時
