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シンが真剣な顔で言うのに『シ〜ン〜?』と低い声を出すと「聞き捨てならない言葉が聞こえたなァ?シン?」と、私よりも低く、地を這うような声が聞こえてきた
「ひっ!」
「瑞姫で釣ろうとするからだろ」
怯えるシンにショーターが呆れたように言うと、「シ〜ン〜」とさらにアッシュが詰め寄る
「こ、ここ他人の家…」
「あとで、話だな」
「ショーター、救けて…」
「自業自得だ」
(元華僑のトップが泣いてる)
怖い光景だ
その時、「お待たせして申し訳ありません」と和服姿の育江さんが障子を開け、巧一さん、敬二さん、昌子さん、良典さん、隆三さんが入ってきた
「すいません、突然大人数で押しかけちゃって」
「とんでもない。皐月ちゃんのためなら私たちはなんでもします。で、今日はどのようなご用件で?」
「今日は、お一人ずつ別々にお話を伺います」
「1人ずつ?」
「みんな一緒じゃ、ダメなんですか?」
「人間の記憶というのは、実に曖昧でして」
シンに対して怖い顔で笑ってたアッシュが、もう切り替えて問いかけてきた敬二さんと良典さんに答えていた
「たとえば、事故現場を目撃した人に「どうやって衝突しましたか?」と聞くと「どうやって当たりましたか?」と聞くのとでは、その人の見たスピードの感覚に10キロほど差ができるんです」
「そうなんですか」
「ですから、それぞれの記憶が他の人の記憶と混同しないようにするため、お一人ずつお話を伺います」
「「……はい」」
一同は不安そうに頷いていた
こうして、5つの場所に分かれて山城家の一族への個別聞き取り調査が始まった
「じゃあ、まずは…僕が巧一さん、落合さんが敬二さん、ショーターとシンが育江さん、明石さんは隆三さん、瑞姫とアッシュは昌子さんで」
「あぁ」
「了解」
「わかった」
「え、なんで僕白樺先生とじゃ…」
「はいはい、行きましょう」
背中を押されて私を見ている落合さんから目を逸らして『じゃ、行こっか』と、アッシュに言うと「あぁ」と頷いてくる
昌子さんに案内してもらい、空いている部屋…和室に案内してもらってそこで話をすることにした
「こちらのお部屋で生け花をされていたんですね」
「はい。で、すぐ駆けつけたら、皐月さんがお義父様の朱色のネクタイを手に、茫然と立ち尽くしていました」
話を聞き終えて、事務所へと戻った
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年12月27日 10時