25話 真相 ページ27
NOside
アッシュがこの罠を仕掛けた人間が誰だか分かった頃、ドースン家では伊部、海斗が床に伏していた
もちろん、英二もだ
「なにをしたんだ!?」
「これでもう、彼は動けない」
ショーターは急いで海斗の上に崩れ落ちた英二に駆け寄ると、ユーシスと名乗っていた少年…月龍は淡々と説明を加え始めた
「もう、目も見えない、耳も聞こえない。指一本動かせない。ただの生きた人形さ」
ぐったりとしている英二をその場へ置いて、伊部の方に歩み寄っていく
「だけどこっちの男と女は違う。目も耳も聞こえる。つまり、この一部始終を見てる。あんたの裏切りもね」
「ッ……」
「アッシュに伝えて。ニューヨークの李王龍のもとへこいって。さもなければこの少年と彼女はゴルツィネの悪趣味の餌食だ
帰ってくる時は命はもちろん、ヒトの姿やヒトの心を宿してないだろうね」
ショーターは月龍を止められない
やりきれない気持ちのまま、英二を抱えこみ横たえる海斗を見下ろす
「お車が参りました」
「行くよ」
月龍は淡々と告げて玄関へ歩き出し、英二を片方の腕で、海斗を背負って歩き始めると、不意に足を止めて振り返る
「…悪いな、伊部さん。だけど、これしか手がないんだ」
それだけ言い残し、月龍の後を追って暗闇に紛れていく
彼女の口元が白い歯を見せて笑っていることなど、伊部は知る由もない
アッシュside
マックスを連れ出してトラックに乗り込み、急いでエンジンをかけて猛スピードで街路を走り抜ける
「おいアッシュ、急に戻るって一体どういうことだ？」
「チャイナタウンが俺たちを売ったんだ!!」
「え!?」
「やっぱりあのユーシスがイヌだったんだ！」
「…だとしても、ショーターと海斗がいる。なんとか食い止めてくれるさ」
嫌な予感は拭えない
そうだあの時、あいつは
“狐に化かされるなよ”
海斗のあの言葉は忠告だったんだ
あいつは知ってたんだ。ユーシスがイヌだったことを…！なぜ教えなかった
しばらく走ってトラックがドースン家に着いた
玄関前で急ブレーキをかけて中に入り、伊部と英二、海斗とショーターを探した
「伊部！英二！」
「海斗！」
俺たちの叫び声とは違い、呼んだ3人のうち2人だけが姿を消していた
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年1月2日 9時
