143話 オセオン ページ12
『ふぇっくし！』
「お、大丈夫か？」
『んー…』
ズビズビと鼻をすすりながらババ抜きのカードを引いていく
ハートのエースを引いて、ダイヤの1と一緒に出す
「そういえば、アメリカで会ったって言ってた男の子、どんな子だったの？」
『あぁ、14歳の男の子だったよ』
「14歳…」
『あんまり言っちゃいけないんだろうけど、その歳で銃を持ってるんだよ』
「銃を…」
焦凍が緑谷のカードを引いて、緑谷が私のカードを引いて一組のカードを出した
私は焦凍のカードを引くも揃うことがなかった
『名前をアッシュって言ってね。金髪のグリーンアイの男の子なんだ』
「へぇ…」
『すごくいい子なんだけど、やっぱり思春期だったよ…セクハラしてきたし』
「は？」
「と、轟くん、トランプ！」
氷で冷え始めたトランプカードを気にすることなく、「何されたんだよ」と焦凍がガンロキくんで見てきた
その勢いと迫力に気圧されて『む、胸揉まれたり、キスしたり？』と素直に言った
「…アメリカだったな」
「え、轟くん？」
「オセオンに着いたらすぐにアメリカに行く」
「何言ってんの!?」
『焦凍、落ち着いて!?』
ババ抜きどころではなくなり、焦凍を宥めてなんとかなった
「でも、14歳で銃を持つなんて…」
『…人を殺すこともあったんだって
自分の見た目のせいで、いろんな人間が暴力を振るったり…人としての尊厳を踏み躙ったり…』
「………」
眠いと言っていた焦凍と緑谷が席を変わり、緑谷が私の隣に座る
窓際で毛布をかぶって眠っている焦凍を気遣いながら小さい声で続けて話す
『似てると思ったの…』
「え？」
『力に虐げられて、自由を奪われて、どれだけ叫んでも助けてもらえないあの地獄の日々と…アッシュが今いる場所とが…私と少し似てると思った』
「…だから、助けたい」
『うん…。私のエゴかもしれないけど、アッシュには幸せになってほしい
そのためにも、たくさんの準備をしていかなきゃいけないと思ったんだ』
「…僕も、その子に会ってみたいな」
『きっと会えるよ』
「そうだといいな」
(きっと会える……アッシュが、私が、生きている限り、きっといつかまた…)
《ご搭乗の皆様、当機はまもなくオセオン国に着陸いたします》
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年8月5日 17時
