元殺し屋はヒーローになる19 (ページ38)

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俺はそれから毎日病院に足を運んだ
ジジイですら、青子を心配していたのか好きにしろとまでいう始末だ

『あれ、また来たの？』

「うん…」

『…ありがとう。お花なんてあんまり貰わないから嬉しい』

「そっか…」

俺が見繕ってきた花束を受け取った青子は、『でも、もらいすぎたかな』と病室内にある花を見回していう
所狭しと飾られた花に気づいて「こめん」と謝ると、『いいよ、嬉しいもん』と言われる

『ねえ、アッシュ』

「ん？」

『どうして、毎日来てくれるの？』

「それ、は…」

花束をテーブルに置いた青子は、軽い足取りで窓辺に腰掛けた
朝日が青子の髪の毛をキラキラと輝かせている

フワリと窓から吹き抜ける暖かい風に、青子の髪の毛がゆらゆらと揺れている

『私はインターンできたヒーロー見習いで、あなたはただのストリートギャング…
普通ならヒーローなんて聞いて、胸糞が悪いとか、見るのも嫌だとか、普通ならそういう態度を取る
私だってそういう態度を取る。誰も助けてくれないことは誰よりも知ってるし、気持ちだってわかる…私だって似たような環境にいた』

知ってる…断片的に教えてくれたよ
青子は優しいから俺を助けようとしてくれたんだ

『ねえ、あなたは…どうして私に構うの？
ヒーローだから？女だから？使えるコマだから？』

「違う…」

『…私は、キミのなんなの？
友達？恋人？家族？知り合い？他人？道端で出会っただけの観光客とガイド？違うよね？』

「俺は」

『キミは、私にどうして欲しいの？』

記憶のない青子からの初めての警戒を剥き出しにされた顔つき
俺はなにも言えなかった。ただ、

「青子は俺を救ってくれた」

『…？』

「俺が男娼として過ごす時間を、青子が買ってくれた
すごく、嬉しかったんだ…くそくらえな奴らばかりの中に、現れてくれた俺の神様」

『……』

「愛してるんだ、青子を」

熱烈な愛の告白
絶対に告げまいと、今だけはと思って言葉を飲み込んでいたが…もう無理だった

「…お願い、青子…俺を、思い出してよ」

サファイアの瞳が、ぐらりと揺れる

それから俺は病院を何度も訪ねた
そしてある日、青子は消えた