137話 安心 ページ39
「青子は、どこに…」
「…書き置きとしては、もう大丈夫だの一点張りだ…あの野郎、気狂って先走ってんじゃねぇだろうな」
「それはない。手紙からはそんな焦った匂いはしない」
「たしかに…青子ちゃんからそんな音もしなかったし」
「腹減って外出ただけだろ」
「なわけあるか」
兄貴4人が残された手紙を見ながら言うと、「仕方ねぇな、青子を探すか」と天城が頭をかきながら言う
「俺も探す」
「そりゃ嬉しいご提案だが、お前は一旦戻れ」
「なんで」
「あのバカがどこに行ったかなんて俺たちもわからねェ
この土地に関してはお前がたしかにわかるかもしれないが、俺からすればあいつは多分何かを探して病院を抜け出したと見える」
「…どういうこと」
「…お前との記憶を探しに行ったんだよ」
「！」
「大丈夫だ…あいつはきっと無事だ」
腐ってもヒーローだからな。と、笑いながら言った天城に俺はなにも言わずに病院を後にした
だけど、青子がいないのに屋敷に戻ることも、俺の男娼としての時間を買ってくれたアイツがいない限りどこに行ったって意味がなかった
「図書館で暇潰すか」
この時間帯なら人もいないし、ゆっくりと本を読めるだろう
俺は市立図書館に向かうために足を早めた
図書館の中に入って本が無数に広がっている広場に行くと、ドクンと心臓が音を立てた
窓から漏れる日の光に当たって、キラキラと輝く茶髪と、白い肌
ヒーローを目指している割には整った手指
なによりも、鮮やかに輝くあのサファイアの瞳があった
「青子」
俺の消えるような呟きに青子は小さく反応した後、ゆっくりと振り返り『…見つかっちゃった』と笑った
『私さ、アメリカに来て本当に良かったって思っちゃった』
「え？」
『馬鹿みたいに笑ってるんだもん…日本にいたあの頃は、笑うことがなんなのかわからなかった…
でも、アメリカに来て…アッシュに出会って、ブランカに会って、よくわかった』
「青子…」
『私にとって、私の笑顔の源は………誰かが笑顔でいることなんだって
だからさ、アッシュ…私が帰る時は笑って見送ってよ…もう、忘れたりしないからさ』
キラキラと輝き、光を放っているのではないかと錯覚させられるこの光景に、俺は視界が歪んでいく
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年5月29日 0時
