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『奴は私の“個性”を失うのが惜しい、“個性”を保ちつつ薬を投与した場合の私が見たいと言った
つまり、その薬は“個性”因子を破壊するのではなく、生かし尚且つ“個性”を持つ人間の頭を狂わせる』
「ただのヤク物濫用だろ？」
「それのどこが、命じるとかなんだ？」
『その薬の成分やどんな症状を引き起こすのかはわからないけど…大抵のヤク物は幻覚作用を引き起こさせる
潜在意識に対して話しかけるって感じなんじゃない？』
「…つまり」
『その薬を投与された途端、投与された人間は操り人形になる』
「「！」」
『粗悪品だったとしても、そこまで酷くはならない
つまり、それは最も危険なヤク物だってこと』
話の本題がよくわからないまま進んでいくのに対して、アカロたちは話の内容がわかったのか、汗をかき狼狽えていた
「そんなこと…あるのか？」
「つーか、そんなの聞いたことねえし…」
『「上」が情報を揉み消していたとしたら？』
「っ…だとしても…っ」
『お前たちだって、「上」の人間がどれだけ汚いかわかってるでしょ？』
「「………」」
『これは夢物語でも、御伽噺でもなんでもない
現在で存在しているんだ…目を背けていたらこのままだといらない犠牲まで出てしまう恐れがある』
「…OK、ヤク物のことならアイワーン先輩に任せた方が早いしね」
「…過去の記録を寮長と一緒に洗い出してみるよ」
『お願い』
立ち上がった2人は、「あ、そうだ」と振り返り青子に何かを投げ渡した
「タルタロスに収監されてる人間の情報だよ。最新版だから目を通しておいた方がいいぜ」
「…そういえば、面会を要請されてるってメールが来てたけど…」
『……………断っといて』
「え、でも…」
『…今会ったって、意味がないし…どうせまた会いにいくから』
悲しげな顔をする青子に、「そうか」とヴァモが頷き、ドアの方へ歩いていく
「んじゃ、なんか分かり次第まとめて提出するから」
「柳沢のこともこっちでなんとか調べてみる」
『うん』
「それでは、皆さん」
「また月下の下で」
ポムッという音と共に小さな煙とトランプが2枚床に落ちた
ハートのエースとスペードの2
「タルタロスって、青子が言ってた牢獄？」
『…まあね』
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年5月29日 0時
