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ドッ、という重い音が河原に響き渡った
「はあ!?」
大きく威力のあるボールは、転校生の元は一直線へ飛んでいく
あんなの受けたらひとたまりもないだろう
『ふんっ!』
「あ」
トンッ、と静かに綺麗なレシーブが入った
まさかそんなに綺麗にレシーブを返すとは思わなかった俺たちは、あんぐりと口を開けたままいた
「姉ちゃん、やっぱりバレーした方がいいぞ…
俺のサーブあげるの、先輩たちぐらいだ」
『えー、そうかな』
「姉ちゃんなら、クラブチーム入っても活躍できると思う」
『私は見てる方が好きだなー』
「そういうの、才能の持ち腐れっていうんだぞ」
大きく弧を描きながらもボールは地面に落ちることなくずっと続いていく
お互いに行き交うボールを返していく姿はとても綺麗で呆気にとられてしまった
「ひゃー、すげぇな」
「深谷さん、あんなにバレーうまかったなんて」
「体育の時もそうだったけど、運動できんだなー」
シン、英二、ショーターの声を聞きながら俺はずっと見た
転校生と一緒にバレーをしてる奴が気になったが
「おーーーーーーーーーーい!!」
「!」
『あ』
「ロードワーク遅ぇと思ったらなに油売ったんだゴラ!!」
「すんません!! 姉ちゃん、またな」
『うん、練習頑張ってね』
ザッザッと坂を登っていく男を見送った転校生は、ボールを持ってこちらに歩いてくると、俺たちに気付き小走りできた
「澪緒、バレーうまいなー」
『あははは…練習とかよく手伝ってたから』
「へぇ」
バレーボールを小脇に抱え、また荷物を置いている場所に俺たちが座って話を始める
転校生もたまに会話に入ってはの繰り返しで、俺は特に何もすることなく昼寝をする
「おーい、アッシュー」
「ん?」
「澪緒がそろそろ帰るんだとよ。俺たちも帰るぞ」
「あ、あぁ…」
荷物を持ち、シンと話している転校生をチラリと一瞥した後、ぱっぱっと服についた葉っぱをはたき落とす
『じゃ、私こっちだから。また学校でね』
「おー」
「またねー」
「またなー」
手を振って見送れば、転校生は少し小走りで駆け出していった
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2021年3月23日 22時