3話 恨みの矛先 ページ6
ガラガラ、ペッペッと水道で口の中を洗い流す。臭い匂いは鼻をかすめてひどく臭ってくる
ハドソン川で泳ぐなんてこと、これからの人生では絶対に遠慮しておこうと思う
「大丈夫か?」
『…………お前こそ』
「俺はかすり傷だからな」
消毒をして傷を縫ってもらっているショーターに答えていると、ソファに寝かされていたアッシュが小さくうめいてゆっくりと起き上がった
「目が覚めたか」
「…ここは?」
「俺の隠れ家さ」
「いよー、アッシュ」
『……………起きたか』
「あ、あぁ…」
『………これ、頬に当てろ』
「え?」
『………熱、もってる』
「…あぁ」
濡れタオルをアッシュに差し出して頬に当てるようにさせていると、「すぐにでも出発したいところだったんだがな」とアメリカ人がそう言った
「出発って?」
「ケープコッド。お前とグリフの生まれ故郷だ」
「……なんで」
「グリフの残した手紙や写真があるだろ?
バナナフィッシュを知ってたのは奴だけだ」
『?』
聞きなれない単語に俺が黙っていると、アッシュは立ち上がって中二階の方に歩いていく
アジア人がつきっきりで英二を見ているが起きる気配はない
「日が暮れたら夜逃げだ。身体を休めとけよ」
アッシュが返事をせずに出て行くのを見ていると、「いいのか?また無茶するんじゃ…」とアジア人がアメリカ人に聞くと「大丈夫さ」とすぐに答えられていた
「あいつもバナナフィッシュの秘密は知りたいはずだ」
「……アッシュは、帰りたくなさそうだったな」
「家を飛び出してきた者にとっちゃ、故郷なんていい思い出ばかりじゃないさ」
「…………」
アッシュが気になるが、俺はそんなことよりもこれからだった
ケープコッドといえば、ここから北東部に向かうということは…気温的にも肌寒くなるだろう。
「アレン、お前寒さには強いのか?」
『…………強い』
「んじゃ、安心だな〜」
「………………アレン、だと?」
「?どうした、おっさん?」
『…?』
治療器具を洗い流していたアメリカ人の手が止まり、俺にゆっくりと振り返りさらには信じられないものを見るように、まるで…俺という人間を知っている顔をした
アッシュside
兄さんを失った悲しみを押し殺して中に戻ると、「おい、おっさん、やめろ!!」というショーターの叫ぶ声が聞こえて急いで中に入った
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年1月15日 11時