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3-2 ページ11

「私、お電話を差し上げた竜円です」










体格もしっかりとした竜円さんは嬉しそうにおじさんの手を握りしめると頭を深々と下げた








「ご紹介します、住職の円海です。こちらの3人はうちの檀家の方達です。桜正造さん、寺町通で古美術店を経営してはります」

「あんたがあの有名な、毛利小五郎はんか」

「あ、いや〜。そんなに有名っスかー?」

『有名にしたんだよね(ボソッ』

「ハハハハ…」












足元にいる新一に耳打ちすると乾いた笑いと共に否定の言葉を述べなかったので、どうやら肯定しているとみた








「お隣が能の水尾流の若き宗家、水尾春太郎さん。そして、古書店をやってはる西条大河さん」

「よろしゅうたのんます」

「まあ、檀家というより剣道仲間ですなあ」

「ほぉ、皆さん剣道を…それでご住職もかくしゃくとしてらっしゃるんですな!」

(へぇ、剣道仲間…)

(凄い…)












興味深そうに見ていると「俺も剣道やろうかな」と佐々木先輩がぼやくと「やめとけバカ」とお兄ちゃんが小突いた











「ところで、このお寺には12年に一度だけ開帳される秘仏があるそうっスな」

「はい。ご本尊の薬師如来様が」

「明明後日から一般公開ですよね?私たち、それも楽しみにして来たんです」

「それはそれは、薬師如来様も喜ばれることでしょう」










住職が笑っているのに対し、竜円さんは困惑しているような表情だった
私と新一はそんな顔に目を見合わせて竜円さんを再び見た



















「なんですって!? ご本尊が盗まれたぁー!?」

『…マジか』

「はい。もう8年前のことになります」












厨子の扉を開けられ、中には2体の菩薩像が並んでいるだけだった










「向かって右が日光菩薩像、向かって左が月光菩薩像です。けど、中央にいてるはずの薬師如来様は賊に…私はすぐに警察に通報しましょうと言うたんですが、住職に止められました
縁があったらまた戻ってくることがあるかもしれんと言われまして…」

「んな、悠長な…」















客間に通された私たちは座卓を囲んで座り、出されたお茶を飲んだ
ふーっと熱めのお茶に息を吹き込みながら飲み込む








「そして8年の歳月が流れ、ほんの5日前、寺の郵便受けにこれが…」










封書がおじさんの前に手渡された
白い封書の表には「山能寺殿」と筆で書かれ、切手は貼られていなかった

3-3→←3話 京都へ



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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年4月9日 15時

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