【HQ】高校バレー界の問題児とは

三十話 ページ31

『やばいやばいやばい』


現在昼休み中。Aが廊下を走る。
その手には数枚のテスト用紙が握られていた。

小走りどころでなく、全力で走っていたもので、すれ違った教師たちは走るなと怒鳴った。
しかしAは聞こえないふりをし、走る。
持ち前の運動神経で、誰にもからだをぶつけることなく行先にたどり着いた。

そこは、2年6組。
赤葦京治の在籍するクラスである。


『赤葦さんっ』


迷わず教室に入り、赤葦の姿を探す。
窓際に教科書を片付けていた赤葦の姿が目に入る。

赤葦もAに気づいたようで、席から立ち上がる。



赤葦｢今週分、返ってきたの？｣

『赤葦さんっ、やりましたよ！！』

赤葦｢うぉっ｣


赤葦の胸に飛び込むAにクラス中が釘付けになる。赤葦は体勢を崩しながらもAを受け止める。

痛すぎる視線が突き刺さる。

それもそのはず、Aはともかく、赤葦も校内で有名人だ。全てのことをそつなくこなし、女子の心に矢を放つ紳士的な言動。それなのに男子とばかりつるむ彼は、男女ともに大人気だ。注目が集まるのもおかしくは無い。


『見てください！！』


彼女の手には80、90と右上に記されている出来のいい解答用紙。Aはそれを嬉しそうに赤葦の顔に押しつけ、無邪気に笑っている。

余程嬉しかったのだろう。
バレーをしている時のような顔をしている。

赤葦は興奮によって赤くなったAの頬をぷにっと摘み顔を近づける。



赤葦｢よく頑張ったね。｣

『ッ！！！師匠のお陰！！』


赤葦も思わず表情が緩んだ。
教えていて良かった、こんな嬉しそうな顔が見れて。


赤葦｢(師匠じゃなくて先生な気もするけど…今はいいかな。)｣

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