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追憶 5.Tage der Gewalt ページ13

俺は前世、12歳で初めて人を殺した。

だけど、そのことに対して、特に何も感じなかった。


貴重な飯を不味くされた怒り、ボロ布とはいえ大事な衣類を裂かれた痛みと不快感、そして同じ人間として犬を食うという行為に対する嫌悪感はあった。

ただ、“あの男を殺した”ことについては一切の罪悪感や後悔などなく、むしろスッキリしていたのだ。悔いるどころか善い行いをしたと少し自惚れてすらいた。


こうして暴力は俺の中にあまりにも簡単に溶け込んだ。
同じ貧民街(スラム)出身であっても、例えば同い年のノエル少年がスポーツで苦境からの脱却を図った経緯を考えれば、俺は至極順当に人としての道を踏み外したことになる。


ああ、人を殺しても何も恥じず、死をただ怯える自分はなんて愚かな人間なんだろう、と。俺は今後一生正しい人間にはなれそうにないんだな、神様がいるならなんて残酷なんだ、と。

頭のどこかでは分かっていた。俺はクズ野郎だから、きっと生まれるべきではなかった。


だけど、そんなクズの俺にすら“死んだらいいのに”と思わせる奴なんか、よっぽど生きてる価値が無いんだから死んで当然の人間だったんだ。そんな自己中満点の新たな見識に気づけたからだと思う。


だから俺は天職である暴力沙汰にまつわる金稼ぎを始めた。最後にゃ決まって人を蹴り飛ばせば解決するような、学も技もない俺向きの簡単なお仕事だ。

俺は気に食わない奴を殴り蹴りできるし、これまで実施してきた物乞いや盗みなどとは比べようがないほど金回りは良かった。winwinというやつだろう。


調子に乗って荒稼ぎしていたら、いつの間にか思わぬ昇格をしていた。


文字通り“何の躊躇いもなく”人を蹴る喧嘩屋。人の心を持たない悪魔のような男。
そういった噂に尾鰭がついたのか、俺の強さはそれなりの規模を持つ組織に買われ、14の頃に雇われ用心棒へと転身した。

俺としては前より美味い飯が食えるので有り難く応じた。武器は両手両足に加え、ガタが来ていた棒一本から拳銃一丁にランクアップした。

追憶 6.Teufel→←追憶 4.Erste tötung



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そす(プロフ) - ハデスさん» 数あるブルロ作品の中から拙作を読んでくださってありがとうございます!! 私も時々読み返すくらいカイザーとのやり取りがお気に入りです! (8月25日 16時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
ハデス - 最高です!お疲れ様でした!個人的に評価10です!カイザーと男主のかけあいが最高でした! (8月25日 16時) (レス) id: 1608cd6270 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - いちごくりーむぱんさん» コメントありがとうございます! 最高の言葉が最高に身に沁みます! こちらこそ感謝です! (7月11日 23時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
いちごくりーむぱん - そすさんイベント参加ありがとうございました!遅くなり申しわけございません…!最高でした!私はそすさんと違って語彙力が無いのでwこんぐらいしか言えませんが凄い良かったです! 素敵な作品有り難う御座いました! (7月11日 22時) (レス) @page1 id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - りりり ( ´・ω・)(・ω・` )@多忙さん» コメントありがとうございます! こちらこそご愛読いただき感謝です! (6月3日 8時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そす | 作成日時:2023年3月25日 9時

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