第2話 少年の苦悩 ページ2
前世とはいえ人として許されない事をしたという自覚はある。そんな俺がどうして幸せを享受できるのだろうか。
困惑と多幸感が両立する複雑な心境の中、まずは感謝を言葉にして積極的に伝える事にした。褒め言葉のボキャブラリーは乏しかったが全く言えない訳ではない。
今世の多大な幸せをタダで味わうなど申し訳なさ過ぎたが、なにぶん3歳児なので出来る事は限られているのだ。
お手伝いやおつかい等も率先して引き受けようとしたが、まだ危ないからと断られてしまった。シンプルに不甲斐ない。
朝ご飯の支度をしてくれた母に、会社に行って帰ってくる父に、幼稚園の先生に対して感謝の言葉を返すと、皆揃って表情を柔らかくしてくれるのは嬉しかった。
けど、まだまだ足りないと思った。完済には程遠い。それどころか、こんな無償の言葉一つで笑みを返してくれるのがより申し訳なくなってしまった。
「ねぇ、母さん。なんでおれに優しくしてくれるの」
足りない頭じゃ解決できない。そう判断し、俺は母本人に助言を求めた。
「父さんと母さんは優しすぎると思う。おれ、何も返せないのに」と質問を続けていくと、母は顎に手を当てて少し考えるそぶりを見せた。
「難しいことは母さんにも分からないけど、母さんはAに“優しくしてる”とか、“代わりに何かして欲しい”って思ったこと一度もないよ?」
「……? でも、毎日ご飯くれて、いっぱいあそんでくれるし、誕生日にはケーキとプレゼントだってくれる。こんなの」
「あのねぇ!」
こんなの知らない。そう言おうとした俺の頭を、母はくしゃりと撫でてくれた。
俺は母相手ですら、反射的に目の前の人間が手を翳すと警戒してしまう。こんなに心地良いのに。
「ご飯は食べないと死んじゃうでしょ!? Aが遊んでると幸せな気持ちになるし、誕生日は年に一度の大事な日! それは理由じゃダメ?」
「ダメじゃない、けど……それじゃおれがもらってばっかりだ」
第3話 天使なんて柄じゃない→←第1話 Happy Another Birthday
200人がお気に入り
「ブルーロック」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そす(プロフ) - ハデスさん» 数あるブルロ作品の中から拙作を読んでくださってありがとうございます!! 私も時々読み返すくらいカイザーとのやり取りがお気に入りです! (8月25日 16時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
ハデス - 最高です!お疲れ様でした!個人的に評価10です!カイザーと男主のかけあいが最高でした! (8月25日 16時) (レス) id: 1608cd6270 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - いちごくりーむぱんさん» コメントありがとうございます! 最高の言葉が最高に身に沁みます! こちらこそ感謝です! (7月11日 23時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
いちごくりーむぱん - そすさんイベント参加ありがとうございました!遅くなり申しわけございません…!最高でした!私はそすさんと違って語彙力が無いのでwこんぐらいしか言えませんが凄い良かったです! 素敵な作品有り難う御座いました! (7月11日 22時) (レス) @page1 id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - りりり ( ´・ω・)(・ω・` )@多忙さん» コメントありがとうございます! こちらこそご愛読いただき感謝です! (6月3日 8時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そす | 作成日時:2023年3月25日 9時