検索窓
今日:22 hit、昨日:127 hit、合計:97,468 hit

追憶 9.Retter Kiwi ページ17

乱雑に包装を破り、パンを一口大にちぎってガキンチョの口元へと運んでやる。薄紫の唇にクリームがついた。

ガキンチョは俺が何をしているのか上手く理解できていないようで、死にかけながらも器用に怪訝な顔をして見せた。んな顔された所で俺にもわかんねぇよ。



「なに、して…んだ?」

「っ、あークソが、テメェの腹の音がさっきから耳障りなんだよ。とっとと食え。喰らいつけ。ガキの死体処理とかクソ面倒な仕事増やすんじゃねぇよ」

「……あ、」



ガキンチョは大人しく口を開いたが、パンを噛みちぎる力すら残っていないらしい。相当空腹に耐えかねて孤児院を抜け出してきたことがわかる。

そりゃミートサンドの香りにも釣られてくるわな、とトントン拍子で納得がいくが、現状は何も解決していない。


そこで俺はパンは諦め、泣く泣く中のフルーツに目を向けた。クリームに塗れてイチゴやミカンが視界に映る中、俺が指で摘み出したのは二切れのキウイフルーツだった。

あの店のサンドイッチは天が創造したと言える出来栄えだが、唯一キウイフルーツは俺の好みじゃない。だからって金を払って買った食い物を粗末にするなんて塵屑じみた所業は俺のポリシーに反する。


俺はクリームまみれの指で、ガキンチョの口に爪で小さく千切ったキウイを突っ込んだ。クリームが潤滑油代わりになったらしく、パンよりもスムーズに喉へ通ったようだ。

ゆっくりと噛むのを見届けてからペットボトルに余っていた水を飲ませてやると、ガキンチョの顔に少しずつ色が戻ってくるのが分かった。


それを繰り返しているとようやく咀嚼できる程度に体力が戻ってきたらしく、図太さも取り戻したようで「もっと食べたい」と宣いやがるくらいには回復したようだ。

こんのガキ、とも思ったが、流石にこのフルーツサンドの残りを食う気にはなれなかったので、大人しく丸ごとくれてやることにする。

追憶 10.Geschäft abgeschlossen→←追憶 8.Hunger



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
193人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

そす(プロフ) - ハデスさん» 数あるブルロ作品の中から拙作を読んでくださってありがとうございます!! 私も時々読み返すくらいカイザーとのやり取りがお気に入りです! (8月25日 16時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
ハデス - 最高です!お疲れ様でした!個人的に評価10です!カイザーと男主のかけあいが最高でした! (8月25日 16時) (レス) id: 1608cd6270 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - いちごくりーむぱんさん» コメントありがとうございます! 最高の言葉が最高に身に沁みます! こちらこそ感謝です! (7月11日 23時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
いちごくりーむぱん - そすさんイベント参加ありがとうございました!遅くなり申しわけございません…!最高でした!私はそすさんと違って語彙力が無いのでwこんぐらいしか言えませんが凄い良かったです! 素敵な作品有り難う御座いました! (7月11日 22時) (レス) @page1 id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - りりり ( ´・ω・)(・ω・` )@多忙さん» コメントありがとうございます! こちらこそご愛読いただき感謝です! (6月3日 8時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:そす | 作成日時:2023年3月25日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。