臨海恋心 ページ6
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「先生、箒が動きません」
「セイレーン。筋肉が足りんのだ筋肉が!!」
D組とE組との合同での飛行術の授業で、Aは膝を抱えて箒をつんつんと突っついていた。
その様子を生徒たちは「人魚の戯れだ」と温かい目で見守っている。
「あはっ♡ 違うよA、こうやんだよ〜」
「フロイド、ほんの少ししか浮いてない」
「ん〜? 浮くだけましでしょー?」
Aの左にはフロイド。
右には同じく箒に跨ったまま微動だにしないジェイドの姿があった。
「おかしいですねぇ。故障でしょうか」
「うん。そうだよ。故障だよ故障!」
ついには箒を足蹴にしはじめたマーメイドに、生徒たちは「おお・・・!」と何故か感嘆の声を上げた。
「箒を蹴るのは感心しないね」
からん、と転がっていく箒を、男性にしては細い指が拾い上げた。
E組のリドル・ローズハート−−−二年生ながらハーツラビュル寮の寮長である彼は、箒をAに手渡した。
「リドルくん。だって、この箒 壊れてるもん」
「はぁ、とりあえず乗ってご覧。ボクが見てあげよう」
リーチ兄弟が隣にいるのにマーメイドに話しかけるだなんて、と周りの生徒は思っているだろうが、リドルには下心の「し」の字もない。
自分たちにとって不都合なことは何も無いと二人は判断しているのだろう。
「わ、見てリドルくん。浮いた!」
「ここまで指導して数ミリしか浮かないのは最早 才能だと思うよ」
やれやれと赤毛が揺れる。
だがここまで純粋に喜ばれると、自然とこちらも笑顔になってしまうものだ。
「やるじゃん金魚ちゃん。Aを数ミリ浮かせたって凄いことだよ?」
「是非 僕にも教えていただきたいものです」
ずい、ずい、と高身長の二人に挟まれたリドルは、苦虫を噛み潰したような表情で一歩 下がった。
「キミたちに関わると損しそうだからやめておこう」
「金魚ちゃんひっでー。俺たちはぁ、真剣に飛行術に取り組もうとしてただけなのに」
「ならその目をやめろ。全く、キミたちの過保護は直らないのかい」
その言葉に二人の眉間から皺は消え、殺す勢いだった眼力もスッと元に戻った。
いくらリドルとはいえど、“自分以外”というだけでやはり警戒してしまうようだ。
「え? 何? どうかした?」
双子を交互にチラチラと見るAに、リドルは「呑気なものだね」と息を吐いた。
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蒼空(プロフ) - あ、バレました??ww (2020年10月5日 0時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 蒼空さん» ありがとうござ・・・ん? あなた、もしやここに来るのは二度目ですな・・・! (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - うるさん» 大変嬉しいお言葉ありがとうございます。最近ちょっと更新停滞気味だったのですが、お陰様で頑張れそうです。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
蒼空(プロフ) - あ…しゅきぃ…(語彙力皆無) (2020年10月2日 20時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
うる - この作品がすごく好きです。これからも楽しみにしています。 (2020年10月2日 8時) (レス) id: 73336d6f0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユナ | 作成日時:2020年9月15日 18時