何時かの潮騒 ページ20
−−−−
−−
「ど、どうも・・・」
Aは尻もちを着いたまま、目の前に現れた異形の怪物を見上げた。
それはとてもこの世のものとは思えない生き物だった。
ひび割れたインク壺のような形の顔を持った怪物は、右手にランタン、左手につるはしのような鈍器を持ち、うわ言のように「デテイケ」と繰り返す。
「もしかして、結構ピンチ?」
スカートについた砂をはらいながら、Aはエース同様マジカルペンを構えた。
「え、じょ、女性? 危ないから下がってくれ!」
「キミたち、シャンデリアを壊した問題児でしょ? こんな状況で放っておけない。さぁ、来るよ!」
「・・・すまない。助かる!」
紺碧色の髪の男は名をデュース・スペードといい、半ば巻き込まれた形でこのドワーフ鉱山にやってきた。
クロウリーから退学の二文字を突きつけられていることもあり、彼は絶対にここで諦める訳にはいかないのだ。
「デテイケェエ!!」
「ふな゛っ!! 来るんだゾ!!」
入学式と時と同じようにグリムが炎の魔法を発動させるが、インク壺の怪物にはあまり効いてないようにみえる。
見兼ねたエースが「特大突風!!」と風魔法を発動させ、煽られた小さな炎はたちまち豪炎へと姿を変えた。
「グオオオオ!」
呻き声を上げる怪物に、次は頭上からAの水魔法が炸裂する。
怪物は怯んだが、そう長いことは続かないだろう。
次にとるべき行動は−−・・・。
「デュース! 今だ!」
ユウが叫んだ。
デュースはその声に反応し、それはもう大きな釜を怪物の頭上に召喚してみせた。
「すごい連携。私いらなかったかな・・・」
大釜にぺしゃんこに押しつぶされた怪物は、身動きがとれずに呻いている。
これなら当分は追ってくることはないだろう。
「よし、あいつが足止めをくらってるうちに、魔法石を取りに行くぞ!」
鉱山の中へと入っていくデュースらに続こうとしたエースは足を止め、Aを振り返った。
「あんたも来い!」
「う、うん!」
いつも手首を掴まれて引っ張られることの多いAだったが、手を握られたのは初めてだった。
直接 手のひらから伝わる熱がなんだかこそばゆい。
「はぁっ、はぁ、」
薄暗い鉱山の中を四人と一匹が化け物の雄叫びに追われながら走る。
「大丈夫か?」
「ごめ、ん。陸で走るの、慣れてなくて」
「・・・やっぱり」
.
683人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼空(プロフ) - あ、バレました??ww (2020年10月5日 0時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 蒼空さん» ありがとうござ・・・ん? あなた、もしやここに来るのは二度目ですな・・・! (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - うるさん» 大変嬉しいお言葉ありがとうございます。最近ちょっと更新停滞気味だったのですが、お陰様で頑張れそうです。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
蒼空(プロフ) - あ…しゅきぃ…(語彙力皆無) (2020年10月2日 20時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
うる - この作品がすごく好きです。これからも楽しみにしています。 (2020年10月2日 8時) (レス) id: 73336d6f0f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユナ | 作成日時:2020年9月15日 18時