土用波の訪れ ページ18
−−−−
−−
「こんにちはリドルくん」
「A。どうしたんだいそんなにニヤニヤして」
放課後、部活動へと向かうリドルに声をかけたのは、何やら楽しそうなAだった。
「噂で聞いたんだけど、ハーツラビュル寮生が大食堂のシャンデリア壊したってほんと？」
腰を折って下から覗き込まれれば、男なら誰だって羞恥から顔を背けるだろう。
リドルも例外ではなく、そっぽを向いて「それは誰から？」と咳払いをして誤魔化す。
「ラギーくん」
「あぁ。なんだか納得がいくよ」
Aは先日、友達のラギーからハーツラビュル寮生が大食堂のシャンデリアを壊したと話を聞いた。
学園設立時から大切にされてきたそれは魔法を動力源として動いており、永遠に炎は消えることがないんだとか。
・・・しかし、コアともいえる魔法石が割れてしまい、使い物にならなくなってしまったらしい。
「雑用係になったあの男の子と、狸くんも共犯者だって」
そう。
入学式に突如として現れた狸−−もといグリムと謎の男の子のユウは、雑用係として学園に滞在することを許されたのだが早速この有様だ。
「ハーツラビュル寮生ともあろう者が、情けないよ。しかも入学したばかりの一年生だ」
「助けてあげないの？」
「自分が犯した罪は自分で償うものだ。周りはそう簡単に助けてくれない。ボクはそう思っているけれどね」
どこか寂しさを含んだ瞳は、宙をさまよった後にぱちりと大きな瞳と絡み合った。
「リドルくん？」
「あ、あぁ。すまない、なんでもないよ。じゃあボクは、部活があるから」
男性の中でも小柄な部類ではあるが、その背中はいつもよりも何故か小さく見える。
気がつくと、Aは何故かリドルの手首を掴んでいた。
「・・・まだ何かあるのかい？」
「なんだか、消えちゃいそうな気がしたから・・・」
自分自身、引き留めた理由が分からない。
ぽつぽつと言葉をこぼすAに、リドルは不器用に笑い、優しく手を振りほどいた。
「おかしなことを言うね、キミは。ボクはどこにも行かないさ」
「なら、いいんだけど・・・」
「今日は部活はないんだろう？ 早く寮へお帰り。保護者がさぞ心配して待っているはずだからね」
それじゃあ、とアッシュグレーの髪の毛をポンポンと撫でてから、リドルは今度こそ背中を向けた。
−−−Aは嫌な予感がしてならなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 683人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼空(プロフ) - あ、バレました？？ww (2020年10月5日 0時) (
レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 蒼空さん» ありがとうござ・・・ん？ あなた、もしやここに来るのは二度目ですな・・・！ (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - うるさん» 大変嬉しいお言葉ありがとうございます。最近ちょっと更新停滞気味だったのですが、お陰様で頑張れそうです。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 46b7785a4c (このIDを非表示/違反報告)
蒼空(プロフ) - あ…しゅきぃ…(語彙力皆無) (2020年10月2日 20時) (レス) id: babd69b29c (このIDを非表示/違反報告)
うる - この作品がすごく好きです。これからも楽しみにしています。 (2020年10月2日 8時) (レス) id: 73336d6f0f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユナ | 作成日時：2020年9月15日 18時
