◇知らない声、可愛い声 ページ27
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「Aさん、どうでした?」
通話越しの向こう側からカチ、カチと秒針が進む音と共にはあ〜、と感嘆を含んだため息が聞こえてくる。
『すっごいですね…私の歌がちゃんとなってる…』
「ちゃんとなってるってw Aさんの歌すごい綺麗なんですもん、僕そんな手直しとかしてないですよ」
『本当ですか?照れるな…あ、そうあの、ラスサビの前なんですけど…』
Aさんから歌ってみたのMIXをお願いしたいと連絡が来て、その楽曲がだいぶ攻めた曲だと知った時は本当に驚いたが、如何せん歌が上手いし声が曲に合っている。なんなら色気も凄い。聞いてるこっちが少し照れてしまったくらいだ。…あ、これは投稿後にツイートしよう。
この歌っている人は僕が知ってるあの紳士的な人なのか。声の色気に圧倒されすぎて無性に普段の声が聞きたくなり、MIXが終わったから通話しながら聞いて変更点があれば伝えて欲しい、と誘ったのが十数分前の自分だ。
『…という感じでお願いしたいのですが…大丈夫ですか?』
「もちろんです!少しお時間貰ってもいいですか?」
『はい。ありがとうございます、よろしくお願いします』
Aさんの希望に添えるようにとパソコンに向き合う。今この声を生かすか殺すかのハンドルを握っているのは僕なのだから、そう意気込んで数十分、一度Aさんに確認してもらおうと声をかける。
「Aさーん、…あれ、Aさん?」
通話は繋がっているはずなのに返ってこない返事。お手洗いにでも行ってるかと考え数分待っても物音一つ聞こえない。
『……ん、…』
「あれ…寝落ち!?」
ギシ、と椅子の軋む音が響き、小さな寝息が聞こえてくる。そうか、Aさん、寝ちゃってたんだ。マイクの位置的に何も聞こえてなかったけど今の小さな動きで拾い始めたみたい。
『、ん…すぅ、すぅ…』
「…かぁわい、」
自分のポリシーを曲げずに常に優しく人への気配りを忘れない、正に"紳士"という言葉は似合う、悪く言えばあまり隙のない彼の"隙"。数分ほど何をする訳でもなくずっと聞いていられるような、規則正しい心地の良い寝息に耳を立てる。そうしていれば、段々と少しくぐもったものへと変わっていった。
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ゆ(プロフ) - yuyuyuさん» コメントありがとうございます〜!とても嬉しいです…!そろそろマシュマロ食べるお話も書きたいと思っておりますので気長にお待ちください! (2022年9月19日 23時) (レス) @page41 id: c22341c169 (このIDを非表示/違反報告)
yuyuyu(プロフ) - 初コメ失礼します!自分自身にじさんじとかのVTuberに詳しくないのですが、内容が分かりやすくていつも楽しんで見てます!!マシュマロ送らせてもらいました!これからも頑張ってください!! (2022年9月8日 17時) (レス) @page41 id: a946daa559 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - 名無し78477号さん» コメントありがとうございます!天然人たらしな感じが大好きなので同じ人がいて嬉しいです!応援ありがとうございます、これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2022年8月16日 19時) (レス) id: c22341c169 (このIDを非表示/違反報告)
名無し78477号(プロフ) - 物凄く面白いです。主人公君の天性の人タラシ最高ですね(人*´∀`)応援してます。頑張って下さい!でも無理はしないで下さい! (2022年8月7日 21時) (レス) @page31 id: 22fae7adeb (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - あかふく**さん» あかふく様、コメント、ご指摘の方ありがとうございます!タイトルの方変更致しました。配慮が足りずにすみません。これからもよろしくお願い致します! (2022年7月3日 11時) (レス) id: c22341c169 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆ | 作成日時:2022年2月23日 5時