戴きます。〈文豪ストレイドッグス〉 (ページ20)

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疑惑ページ20

よい天気です。

「まったく嫌になるな。」
「妾は嫌いじゃないけどね。」
「国木田さん。こいつらどうします?」
「窓から棄てとけ。」

Aは散らかった書類を一枚一枚拾い集めます。先ほどAの腕を引っ張ったのは乱歩でした。

「江戸川も手伝わないか。」
「名前で呼んだのなら考えてやらんこともないね。」
「云ってろ迷探偵。」
「何だって?」

乱歩とAの会話をきいている新人。中島敦は困惑していました。

「国木田くん。僕そろそろ"名"探偵の仕事に行かないと。」
「名探偵?あぁ、例の殺人事件の応援ですか。」
「そう。警察がね。」

乱歩はひょいっと机に上り、立ち上がりました。Aは厭そうな顔をしています。

「世界最高の能力を持つこの名探偵、乱歩さんの助言が欲しいって泣きついてきてさ。」
「おい下りろ迷探偵。」

Aは乱歩のズボンの裾を引っ張ります。乱歩の顔は膨れっ面です。でも素直に机の上から下りました。怒られると怖いからです。

「Aはついて来るんだろうね?」
「ついて行かない。」
「俄然やる気が出ない。」
「嫌いな奴と一緒にいる方がやる気も糞もないだろ。」

ふんと乱歩から顔を背け、Aは事務員の手伝いに向かいました。乱歩はその場で立ち尽くしています。

「嫌ってるのは……。」

ガタン。

「すみませんAさん。落としちゃいました。」
「中身は資料だ。問題ない。」
「それにしてもこの書類、資料室にしまわないといけませんね。」
「……。あ、あぁ。」

気づくと乱歩も新人もいなくなっていました。どうやら名探偵の仕事に向かったようです。

Aは思いました。

『資料室にはこれまで解決してきた事件の詳細が綴られている書類があるはずだ。』

「この書類の整理は私に任せろ。好きだ。」
「は、はい。わかりました。お願いします。」

何か告白してるみたいだな……。と周りからじろじろと見られていますが、Aはそんなことに気づきません。

「妾はもう疲れたよ。」
「そんなAさんが僕は好きです。」
「賢治アンタまさか……。」

必ずこのぼやけた記憶を元に戻してやる。

自分は本当に入社試験に合格したのか。
自分は本当に賢治選んだのか。
では何故写真機が私の元にあるのか。
もしかして自分は本当は写真機を選んでいたのでは。
賢治には異能力がある。
もしかして自分は入社試験に合格などしていないのでは。

「……。」

どうしても自分を疑ってしまう。