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その言葉を聞いた時俺を襲ったのは
_____怒りと絶望だった。
Aに対してじゃない。
周囲と自分に対してだ。
顔も知らない。名前も知らない。性格も、人柄も。
そんな奴らのせいで俺は大事な人から遠ざけられた
でもそれはもっと前に外堀を埋め、誰にも文句を言わせないような状態にしなかった自分にも責任がある
「ね!知ってる!?受験の日私たちのクラスに絶世のイケメンいたらしいよ!」
『なにそれ』
「隣の教室で受験してた友達が見かけたらしくって、色白・茶髪で彫刻みたいに端正な顔立ちだったって。気づかなかった自分を殴りたい」
『色白、茶髪の彫刻顔って……』
_____なぁ、お前は誰を想像したんだ?
「ま、でもあんたは数学の時間中に見ず知らずの他人の手助けちゃうようなタイプだもんね」
『……?私なんかしたっけ?』
「は?忘れたの?……有り得ん」
……そうだったな。お前はそういう奴だ。
優しくて、心地よくて、朗らかで。
俺の全てを救う。そんな人
『__て、話を今日してたんだけど、』
「……それで?」
『透って受験で使った教室覚えてる?』
……だから
「……悪い。覚えてないな」
『そっかー、そうだよね』
褪せることのない思い出に嘘をつく
「それがどうかしたのか?」
『んーん。もしかしたら友達が話してた人って透のことだったのかなぁって』
「……どうだろうな」
本当は“そうだよ”って肯定したい。
……けど
『……もし本当にその人が透だったら運命だよね』
「っ、」
純粋で美しいお前は俺の薄汚れた情緒なんて知らなくていい
「……そう言うお前はどこの教室を使ったんだ?」
『私?私はね、_____3ーB』
「……そうだよな」
『何か言った?』
「いや」
出会った場所で
救われた場所で
もう一度、Aのそばに行くよ
お前にとっては運命で、俺にとっては執着。
「A。」
『ん?』
「来年も同じクラスになりたい」
どんな形でも俺の気持ちは伝え続けるから
『ちょっ、と…!?』
「……好きだよ。ずっと」
小さな身体を抱き寄せ、軽く頭を撫でると慌てふためく彼女。
それが嬉しくて、愛おしくてしょうがない。
Aは何も知らないまま
_____俺に愛されて。
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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月16日 16時