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彼女は俺の目を見て優しく語りかける



『奈良坂には安心して背中を預けられる気がしてる』



陽だまりのような温かい眼差しが俺を捉えて離さない







『私からしたら奈良坂が1番だよ』



「っ、」



『奈良坂がボーダーで1位取るまでは私の1番じゃダメ?』






……あぁだめだ。






完全に堕ちた。







好き。とかそんな小さな感情じゃなく、もっとこう、


_____沼に浸かっていくような感覚




もう彼女以外見えなくて、どうでも良くて
ただこの人の傍にいたい。そう思ってしまった。



1番近くでこの笑顔を見る権利が欲しい。
彼女を抱きしめる権利が、
彼女を独占する権利が
彼女を愛する権利が



欲しくて堪らない。





「…お前、そう言う所だぞ」



『いきなりなーに』




当然この気持ちを悟られる訳にもいかず、咎めてみてもふにゃっと笑うだけ




『奈良坂の綺麗な顔には澄み切った表情がよく似合う

んだからずっと悩まずに笑っててほしい、なんてね』

「…よくそんな事が言えるな」



『なんで照れてるの』



寧ろ照れない方がおかしいセリフをサラッと言われ、赤面してしまうのを必死に抑え取り繕う




「暗い話をしたな。悪かった」



『別にいいよ。私もくだらない事聞いちゃったし』



「逆にどうしてあんな事を聞こうとしたんだ?」



『…なんでだろうね』




最後の濁すような言葉に違和感を感じて彼女の方を見据えた時、幸せな空間を切り裂くようにシュッと部屋の扉が開く。


そこに立っていたのは彼女を隊に引き込んだ張本人であり、この隊の隊長である三輪と前髪をカチューシャで止めた陽介



つかつかと足を踏み入れる彼らが視界に捉えたのは俺の隣に座る人物だった




秀 「…戻っていたのか」



『割とさっきね。あ、座る?』



秀 「俺はいい。座ってろ。…お前疲れてるだろ」



『…んー?』



彼女は三輪の問いかけにYesともNoとも言わずにただふわふわと言葉を濁す。



……と言うか、



「(……福地は疲れているのか?)」



俺に笑いかけてくれた時は疲れなんて一切顔に出ていなかったし、今も“疲れている”ようには見えない


「(……なら三輪の思い過ごしか)」





なんせ過保護な三輪のことだ。
“疲れている”とこじつけて彼女の様子を伺っただけだろう






そう結論付けた後、彼女を盗み見て1人決心を固める













「(あんたにとって1番の存在になるよ)」






A。

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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月16日 16時

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