三輪隊の6人目__SideStory2 (ページ14)

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出会いは2年近く前。

六叡館に受験生として来ていた時だった。

進学校と呼ばれる学校なだけあって皆制服をしっかり着こなし、硬い表情で参考書や問題集と向き合う

そんな中Aは

＿＿＿＿＿俺の前の席にいた。

今考えるとほぼ奇跡に近い出来事だが当時は彼女についてはつゆ知らず。

彼女が美形でも何でも興味なんて微塵もない。

……と言っても受験生なら当たり前か。

名前も顔も存在も。何一つ知らず1日が終わるはずだった。

＿＿＿＿あの時間が来るまでは

｢……あ、｣

よくある事だろう。
でもあの状態を“よくある”で片付けるにはあまりにも悲痛すぎた。

目の前には数多の数学の証明問題。

そして俺は消しゴムを落とした。

それに六叡館の試験は全て鉛筆指定。

シャーペンのように後ろの消しゴムを使うなんて出来ないし、ましてや進学校の数学の証明問題を一言一句、さらには計算ミスなしでやり通すなんて無理に近い。

そう判断して速やかに手を挙げたが、

……よっぽど運が無かったんだろう。

試験官が書類整理で気づかない。

刻一刻とすぎる時間に焦りが募り、片手で問題を解こうにも頭が回らなくなってきた

｢(…もういい)｣

最悪間違えたら二重線を引いて訂正すればいい。
ここで時間を取られれば不合格さえ過ぎり始める

その判断を下し、上げていた手を下げ問題に集中した

＿＿＿＿＿それから5分ぐらい経った頃か

ｶﾞﾀと試験官が席を立つ

そしてツカツカと歩いて来るのは自分が座る席の通路

ようやく気がついてくれたか、と安堵したのも束の間
試験官が足を止めたのは1つ後ろの席だった

『すみません、その鉛筆……ぁ、そっちは後ろの方の』

問題を解きながら気づいてくれる事を願うと小声で話すのが聞こえる。

その会話の数秒後には自分の机に落とした消しゴムが置かれていたため、結果的に無事にテストを終えることが出来た

偶然と言えど救われた。
そんな安堵のような感謝のような気持ちを抱きながら1日の試験を終え、帰路につく最中だった

女子の会話が耳を掠める

「A数学の時間鉛筆落としてたよね？w」

『あー、ね』

僅かに聞き覚えのある声と内容

あの時の事なのか分からないのに何故か足が止まり、“聞け”と言わんばかりにその会話が頭に入ってきた