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早歩きで音楽室に入る。

凛月と2人きりになった刹那
夏目に対して抱いた怒りは焦りに変わり、やってしまったと後悔が募る



「大丈夫?」

『…ごめんなさい』

「なんでAが謝るの」

『だって、』




あの場の空気を悪化させ、夏目を傷つけた




本当に私が居るとろくな事が起こらない。
人を傷つけたり、悲しませたり。

これならいっその事_____




「学院に来なければ良かった。そう思った?」

『っ、……うん、』

「それは俺が傷ついちゃうなぁ」

『へ、』



動揺を落ち着かせるようにふわりと優しく身体を包んだ凛月は肩に顔を埋め耳元で囁く



「Aはあいつに反抗して傷つけたって思ってるかもしれないけど、あの言葉を否定してくれなかったら俺が傷ついてた」

『どういう、』

「兄者の弟だからって言葉否定してくれてありがとう」




食い気味に言葉を被せられる中、頭の中では疑問符が飛び交う



だってそんなの当たり前の事でしょ?


貴方は朔間凛月。
声も、性格も、外見も、ピアノの音色も。
全て零とは違う。


零の弟なんて、
そんな脇役で済まされる存在じゃないと以前から伝えていたじゃない。




「……ねぇA」

『どうしたの』

「本当は聞かないでおこうと思ったんだけど、やっぱりちゃんと確認したい。






_____どうして兄者と電話してたの」








『零と電話?いつ?』

「一昨日の夜」



悲しげに問われるもパッと思い出せない。
昨日は凛月と過ごして、その前と言うと__



『……あ』


「俺さ、あんたが兄者と電話してるの知ってやっぱり兄者の方が良かったのかとか、なんで捨てられたんだろうって___」

『それは違う』



一昨日の事なのにどうして忘れていたんだろう。
確かに零からの電話に応答したじゃない。






『確かに零と通話した。けどあれは誤操作に近いものだったの』

「は、?」

『……凛月、毎日沢山メッセージ送ってくれてじゃない』



私がこの学園から離れた日からずっと
私からの既読が付かなくても常に関わりを持とうとしてくれた



『ずっと目は通してたから』

「っ、」

『新学期に入って凛月から“転校生が来た”って連絡が来て少し気になってしまったの』



それに追随して夏目からの連絡。




あの日の深夜、バイオリンの練習を強制終了させられた後に零から着信が来た時、零なら何か分かるかもしれない、なんて邪念が過ぎった



結果、応答ボタンを押してしまったのだ

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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月3日 23時

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