勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

125話 夏夜に響く蛙の歌声 ページ35

あれから数ヶ月、今日で夏休みが始まって約２週間が経つ。

８月の蒸し暑い夜。暗闇から蛙の大合唱が聞こえてきた。

案外宿題が簡単で、５教科の課題の方は夏休みの始めに終わってしまった。みんなが苦手そうな

読書感想文や自由研究とかも、すでにラストスパート。

一矢の勉強については、とにかく私が頑張って教えた。

全ては明後日の魔法使いの仕事が楽しみだったから。

数ヶ月ぶりに澪に会えるんだ、あちらも寂しかったに違いない。

紗羅達が住む２０３号室で魔法を使って会話しても、なんだか味気なかったから。

……その一方、叔母さんは私が３日間いなくなる事が寂しいらしい。



「Aちゃん、今回の仕事は気をつけてね。ついて行けなくて寂しい……」

「大丈夫だよ叔母さん。私だって魔法使いになって４ヶ月経ったんだし」

「そうですよ！ Aは今回の期末テストで上位だったんですから！」

「だからって魔法使いの仕事とは関係ないでしょ、誤解を招くような事言わないで」

「事実じゃないか〜」



この日が来るまで本当に色々あったな、本当に色々あった。

まずは先程アレンに言われた１学期期末テストの事で、私は割と上位に入ることができた。

次に、一矢の骨折と部活の事。骨折自体は無事治ったが、陸上部に入るのは断念。

それに畳み掛けるように、陸上部へ入部したはずの勇助が諸事情で情報部へ転部して来た。どう

やら勇助は神の子らしく、神の力が覚醒したとかなんとかで頻繁に倒れることが多くなったので

陸上部は断念したらしい。なにそれ。

魔法の練習の方では、普通の練習の他に攻撃魔法をやるようになってきた。私は氷魔法が扱いや

すかったから、それを中心に練習をしている。

武術もあるが、それは一矢が知里花さんの槍とかロックさんがたまにやってる弓とか雷華さんの

ナイフならぬダガーに憧れて頼んだのだ。

なにしろ予定の中に入っていなかったそうなので、あまり話は進んでいない。

私はそういうのは苦手だから、やってないし。

しかし、一矢が一番始めに使用する武器は決まった。

日本を代表する武器、日本刀だ。

それを扱えるのは、二丁拳銃で戦っているはずの世羅と、彼の剣術の師匠でもある元鉱石採掘員

のジンクさんという人だ。ジンクさんの方はもうだいぶお年寄りなので、結局世羅が教えること

になったらしい。一応アレンも日本刀が扱えるのだが、忙しいから駄目なんだとか。

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