勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

122話 親世代大集合 ページ32

小鳥のさえずりが聞こえなくなる朝、アレンと魔法の練習をする。

またあっちに行こうと思って、休日部活に行った勇助と付き添いの世羅を待つ。

やっと勇助達が来たと思ったら、世羅が「あっちに行く前に一矢の家まで連れてってくれ」と言

い出し、一矢の骨折していない方の腕を引っ張って行った。



「あっちの世界にはしばらく行けなくなった。８月まで我慢してくれ」

「マジかよ！？ それで、何故俺の家に？」

「お前の両親に合わせてほしい。あいつらやっぱり見覚えがあるんだよ」



魔法使いの仕事についてだけど、長期間にわたる仕事らしいので夏休みの中頃に行くんだとか。

その間、しばらくあっちの世界に行けなくなるらしく、私はもっと澪と遊んでおくべきだったと

悔やんだ。そんな私を、「私達が住んでる２０３号室に来れば魔法で会話出来るから〜」と言っ

て紗羅が慰める。少しだけ元気が出た。

現在のメンツは、私と紗羅と一矢とアレンと世羅と勇助。背後から叔母さんとクラーレさん。

で、アレンは小さくなって私の鞄にいる。

一矢の家の玄関前まで歩いてきた世羅は、この家に居候しているくせにわざわざチャイムを押し

て彼の家の方を呼び出した。



「貴方達は一矢のお友達ね。いらっしゃい。……貴方、世羅くん？」

「母ちゃん世羅のこと知ってるの！？」

「うん、それに、そっちの子は紗羅ちゃん？ えっと、どうしてここに？」



一矢の母様らしき人が出てきたと思うと、世羅達の姿を見るなり表情を固まらせてしまった。

二人共、彼がここにいることに驚いている様子。

母様は急いで父様を呼びに行かれた。父様も同様、世羅達を見て驚きを隠せないようだった。

驚きと混乱で、私達は黙って突っ立っていた。



「よう雄也、１年でだいぶでかくなった気がするけど…… １ヶ月で何cm伸びた？」

「いやいやいや、なんで世羅が一矢達と一緒にいるんだよ！？」

「２.５cmずつか…… あ、ごめん。聞いてなかった」

「おい」

「まさかお前が椿と…… 一矢のツッコミ気質はお前に似たんだな」

「おいチビ」

「あ？ 昔はお前の方が小さかっただろ素粒子」



二人は見た感じ昔からの知り合いのようで、あんな言い合いをしても仲が悪いとは思えない。

大体、話を聴いてなかった世羅が悪いし。

この様な言い合いの中、世羅は正式に榎原家で居候をする事を許された。

そして、私達は現在と過去が入り混じる訳の分からない話をきくハメになった。

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あずきいろ

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