勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

109話 政治家の林檎好き男子 ページ19

バトラーさんを驚かせたメイドさんは、私達を待合室へ案内してくれた。

帰るまで側にいてくれるらしく、丁度彼女が自己紹介を始めたところだった。

現在、客間と思われる部屋に１１人(寅除く)の人がいる。

百合亜さんとクラーレさんとルピナスは、バトラーさんに案内されてミリヤさんの元へ行った。

なのにこの人数だ。日之影家と中学生組が集まったら凄い量なのだと今気づいた。

幸い部屋が広かったので良かったが。



「今月からメイドになったアスター・セルヴァントです。宜しくお願いします！」



そう言って、メイドのアスターさんは深々とお辞儀をした。

頭の後ろにゆったりと束ねられたカメオ・ピンクの三つ編みが、さらりと落ちる。色素が薄く、

元気いっぱいな彼女を少し落ち着かせてみせるようだった。

彼女の後ろには、長い間大切に扱われ続けてきたのであろう振り子時計がある。

百合亜さんの家に置かれている物よりも大きい。初代フェアヴァルト家の代からあるそうだ。

大きな古時計は、その場から一歩も動くことなく時を刻んでいる。

初代から２代目、３代目に渡っていく事に対して、エルティエの魔導書やこの古時計はどう思っ

ているのだろう。主と別れて寂しいとか、主の子供を見守る事ができて嬉しいとか、早く自由に

なって生まれ変わりたいとか思わないのだろうか。

それから数分後、百合亜さん達が帰ってきた。アレンが言っていた"お嬢様"らしき人物も。

しかし、メガネの糸目なミリヤさんの口から聞こえた声は、私達の予想とだいぶ違っていた。



「やぁアレン。私の頼み事をきちんとやってくれているようだね。ありがとう」

「もちろんです。ところでミリヤさん、随分と声が低くなられたようですが……？」

「先週やっと低くなってさ。声変わりは私の年なら遅いくらいだけど、そんなに珍しいかい？」

「え、えーと、えーと………」



私は困惑するアレンにテレパシーを送る。

お嬢様じゃなくて坊っちゃまじゃないの。声変わりしていなかったからって気づかなかったの？

そう問いかけると、アレンは本当に分からなかったと答える。

アレンが最後にミリヤさんと会ったのは、ミリヤさんが声変わりをする前。

女顔で中性的な服装が多く、どっちかと言うと女性っぽい名前のミリヤさんの事を本当に女性だ

と思っていたようだ。華奢な体つきのうえに一人称が私だから仕方がなかったかもしれないが。

訂正しよう、ミリヤさんは男であった。

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ラッキーカラー

あずきいろ

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・中二病って難しいけどかっこいいんです

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