勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

103話 半獣と特殊型の兄弟 ページ13

私達が客間で林檎ジュースをすする中、世羅は体の包帯を外す。

その後世羅は治癒の薬を飲み、治癒魔法をかけられた。

世羅の傷は一週間前からだいぶ良くなったが、それでもまだ痛々しいようだ。

私はその光景を見なかったが、痛そうなわりにはそこまで唸っていなかったらしい。

現在は治癒魔法が効き終わるまで安静にしているそうだ。

それよりも、私が思ったのは。

ぼいんの美女に診察と看病をされるなんて…… クラーレさん思ったより優しそうだし………

横を見てみると、紗羅はいつも通りの読心術を一矢達に試している。

彼らもやっぱり羨ましいと思っているそうだ。世羅は不満そうだが。



「おい紗羅、お前読心術使ってるだろ……」

「あ、バレた？ やっぱり男の子なの」

「ああああああ」



一矢はさっきよりももっと顔を赤くして、自分よりも背が高い勇助の後ろに隠れた。

「お年頃だな〜」ってからかう雷華さんと、クラーレさんの"あの差"は歴然だった。うん。

そして、雷華さんは先程と同じようにくしゃみをした。

そんな話はどうでもいいとして、私はまた林檎ジュースをすする。

トラ猫の寅を膝に乗せて、ゆらゆらと揺れる尻尾を目で追いかけた。

私は猫派だから、このひとときは幸せでしかない。

狼や豆柴も可愛いけど……！



紗羅曰く、寅の本来の姿は人間に猫の耳と尻尾がついた半獣。

服装は世羅とよく似ていて、世羅の黒いタンクトップの代わりに袖が肘までの長さの紺色のシャ

ツを着用。白いパーカーのフードに黒い猫耳がついている。そのパーカーに尻尾はついていない

とか。髪型は世羅とほぼ同じ。しかし、髪色は金で目は赤。

幼い頃の世羅が本当に強い魔法を使ったら、多分こんな感じだろう。

普通に機能する耳は、人間と同じ位置に二つ、頭の上に猫耳が二つ。

そして、飾りではあるがフードに二つ。

これが半獣の特権というものか。

まだ幼いので兄の力を借りないと猫になれないのだが。



「紗羅ちゃん、お兄ちゃんの治療が終わったわよ〜」

「世羅は"お兄ちゃん"じゃないですー！」

「はいはい、分かってるわ。私、桜の子供達の事はなんでも知ってるんだもの」



世羅と張り合おうとする紗羅をなだめたクラーレさんは、ある人物の名前を口に出した。

この間、雷華さん達が秘密基地の木の根元にカーネーションを供えていた時も、同じ様な名前を

聞いた覚えがある。

少し前に紗羅から教えてもらった、桜さんの知識は確か………

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