勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

113話 地味に重たい部活事情 ページ23

夏に近づく日差しが暖かい月曜日、私はいつも通り交差点で一矢を待つ。

そして、一矢はいつものように私の元へ駆け寄って来た。

一時的に治っていたはずの腕には、また包帯が巻かれている。

そろそろ仮入部が始まるというのに、未だに治らないのは大きな問題だ。

せめて入部の後に骨折していれば良かった気もするが、こうなってはもうどうにもならない。

ちなみに、一矢が行きたい部活は勇助と同じ陸上部。私とルシアは情報部だ。

勇助は、一矢の骨折が治っていないことに危機感を感じている。元はと言えば一緒に入部するつ

もりだったのに、こんなんじゃひとりぼっちで可哀想だ。

なんだったら３班全員で情報部に入ってしまおうかと思ったほど、酷い現状だった。



「今日も一番なり〜」

「早い……」

「Ciao！ そろそろ仮入部が始まりますネ〜！」

『きゃあぁぁぁ』



今日のルシアは、通常のボンジョルノ攻撃と一矢に対する仮入部攻撃をしてきた。

後で一矢の腕の怪我を思い出したみたいだから、悪気はなかった様子。

ルシアは「一緒に情報部に入りませんか？」と、彼女なりに精一杯一矢を慰めようとした。

しかし、一矢にとっては逆効果だったみたいで、彼はさっきからずっと教室の隅で拗ねている。

ルシアの方は、私の背後で慌てふためいていた。

先程の会話を一部始終聞いていた勇助は、二人を元に戻そうと必死。

放っておけばすぐに仲直りするのに、勇助は心配性だ。

まぁ、一矢と一緒に陸上部に行けないというのも焦りの原因なんだろうけど。

やっぱり３班全員で情報部へ行こうか。



「……世羅？」

「おう」



なんとなく横を向くと、私の隣に原寸大の世羅が立っていた。

その悠然とした態度で、"他の奴には見えないぜ"とひしひし訴えてくる。

彼の表情に意地悪な笑みや瞳の鋭さはなく、きょとんとしたつり目で私の方を見つめていた。

チート野郎でもこんな可愛い表情が出来たんだなと、今思った。

だってチートだもの。戦闘能力だけならチートに限りなく近い気がするもの。

あの炎の海の中に単独(しかも笑ってる)で突っ込んで生きて帰って来るんだもの。

本人は否定してるけど、詳しい事を教えてくれない限り永遠にチートなのだ。



「ところでさ、お前らっていつまでこの世界にいるつもりなんだ？」

「いつまでって、そりゃずっとだろ。澪と一緒って訳でもあるまいし……… ぐすん」

「……まぁいいや、今のは気にしないでくれ」

114話 本当の家族→←112話 魔術の名称勉強会

ラッキーカラー

あずきいろ

勿忘草の丘 ＊作成話 ＆・つぶやき

・中二病って難しいけどかっこいいんです

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す