212話 森野の大福現る ページ32
【勇助 視点】
神社の裏に回り、御神木の辺りを見渡す僕ら。
大人二人が両手を広げても届かない程の直径の幹には、人影どころかシロコという名の精霊達の
姿すら見当たらない。
すっかり陽が落ちた深い森の中に、僕らは佇んでいた。
「ホントに何処にもいないわね…… 木ノ葉どころかシロコすら見つからないわ」
「可能性があるとすれば、木ノ葉も"奴ら"に、あの施設へ連れ去られてしまったか……」
「だから、急に耳元で話しかけないでって言ってるじゃない! それに、"木ノ葉も"ってどういう
ことよ。あの施設ってなんなの?」
「はっはっは、ロックに聴けば一発で分かるぜ。そう簡単に教えてもらえるとは思えねぇがな。
まぁ、この様子じゃあ今日中に木ノ葉を見つけ出すのは無理だろ」
「ぐぬぬ…… せめてシロコの生き残りだけでも探し出すわ! 今に見てなさいっ!」
「ふーん、それならどっかに隠れてそうだな」
世羅と紗羅は相変わらず、兄妹喧嘩をしているようだ。
微笑ましい光景の向こうで段々黒に近づいていく夜空、それに同化しようとしている大木の葉が
ザワザワと音を鳴らすから、僕はどうにも恐ろしくなってその場に立っていることしかできなく
なってしまった。周りにはみんながいるんだから、おばけなんて怖くないはず。
しかし、さっきまで僕達を照らしていたはずの僅かな月明かりは消えてしまい、周囲は知里花さ
んで言ったところの「漆黒の闇に閉ざされた禁忌の森」状態に。
向こうで小川でも流れているのか、河鹿の鳴き声と草花が夏風にそよぐ音しか聞こえてこない。
明かりが必要だと判断した僕は、仕事のために持ってきていたリュックから白い懐中電灯を取り
出し、自分自身の足元を照らした。
「……あっ」
「ふみー?」
大福みたいな白い頭、それを支える小さな胴体、せいぜい2頭身といったところだろうか。
ふみー と鳴く小さな生き物が、僕の前に立っていた。
白いってことはもしかして、この子があの精霊のシロコ?
突然現れた未知の生物に気を取られていると、紗羅がこちらに走ってきた。
「やった、やっと見つけたわー!」
「ふみっ!」
えっと、お目当の子が見つかったようで良かったね。
僕は夏の夜の雰囲気に慣れていないから少し不安で、何度か周りを見渡す。
みんながいることを確認せずにはいられなかった。
……でも、まだ違和感がある。
咄嗟に御神木の上の方を照らした瞬間、背筋が凍りついた。
213話 懐中電灯で照らしたら→←211話 髪色と体質の関係
ラッキーカラー
あずきいろ
4. までのキャラが扱える楽器をご紹介!《共通点も考え中》
シネラ:???…… まさかのオリジナル楽器です。ネタバレになりかねないので???状態。
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作者名:さやや | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8211/
作成日時:2017年8月12日 22時