銀さんと日記帳(上) ページ8
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「どうもー、万事屋銀ちゃんこと、坂田銀時でーす。ちょっくらお邪魔しますよー。」
そう名乗る男は、否応なしに私の病室に入ってきて手に持っていた袋を私に差し出した。
「え、と、貴方は...どなたですか?」
私の質問に彼は一瞬だけ固まると、すぐに顔を晴れやかにして言った。
「だからー万事屋銀ちゃんですって、貴方にこれを届けて欲しいと、依頼人に頼まれて持ってきたんですよ。」
「依頼人?それは誰ですか?」
「貴方の、恋人、です。」
彼はほのかな笑みを浮かべてそれだけ言うと、小さな袋を手前のテーブルに置いて椅子に座った。
「恋人、ですか。
実は私、交通事故に遭ったらしくて、記憶が全然ないんですよ。自分の名前も今朝初めて知った程でして...
なので、生憎恋人がいた事すら覚えていないんです。」
「ええ、それでも渡して欲しいと言われたので、持ってきました。受け取ってください。」
言われて仕方なくその袋の中身を見ると、
「これは、ミルクティー?何で、」
「貴方の好物だそうですよ。」
はぁ、とだけ呟き、彼がそこに居座ることに違和感を感じた私は声をかけた。
「あのー、まだ何か用ですか?」
「あー、すっかり忘れてた」
「はい?」
「ああ、いや、なんでもないですよ!そ、それじゃあ俺、行きますね。」
「はい。ありがとうございました。」
立ち上がって扉へと遠のいていく彼の背中を見て、私は何故かふと呼び止めたくなった。
「あ、あの!」
「はい!!なん....ですか?」
(この反応....もしかして)
私の呼び掛けに瞬時に反応した彼に再び問いかける。
「私達...もしかして、知り合い...なのですか?」
「あ、あー、そうですねー、と、友達?ですかね。」
なぜかよそよそしく苦笑する彼に私は疑問を抱いたが、そのまま帰るのを見送った。
白い病室にたった一人、孤独とも呼べない虚無感に襲われながら、
ふと、机に置かれた手帳を手に取った。
手帳の表紙には、『Diary』と書かれており、随分使い古された日記帳であることが分かった。
(もしかして、事故に遭う前、私が記してたものなのかな。何か思い出せるかも。)
好奇心から私は手帳を軽くめくった。
内容を目にした瞬間、両手からその手帳を落として口元を押さえた。
衝撃を受けつつ、もう一度その手帳を拾い、何度も何度も穴が空くほど熟読した。
目に焼き付けるように、心に刻み込むように。
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のと丸(プロフ) - メローネ大好き少女さん» 誠に申し訳ありませんが、ただ今リクエストは受け付けておりません。ご了承願いますm(_ _)m (2019年8月20日 1時) (レス) id: 73b1ba17eb (このIDを非表示/違反報告)
メローネ大好き少女(プロフ) - リクエストよろしいでしょうか?男になった月雄を見て目を合わせられない夢主にどんどん迫ってくるのと月雄が入浴中の夢主を襲いに行くのをよろしくお願いします!分かりづらくてすみません (2019年8月20日 0時) (レス) id: d4923716c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年8月16日 5時