貴女に惚れました。【文スト】【男主】

貴女に惚れた22 ページ25

「俺が粛清した人間の中に、"有島武郎"と云う人物は居るか調べてくれ」


「《有島武郎、ですか？……ちょっと待ってて下さい》」


端末から保留音が聞こえ出した。同僚は今頃、資料を探させているところだろう。


ふと、少年に目をやる。怒りで顔を歪ませてはいるが、綺麗な顔立ちをしている。十四、五と云ったところか。随分と幼い。


「《居ましたよ》」


そんな事を考えていると、同僚が資料を見つけたらしく、端末から声が聞こえる。


「《有島武郎。三十五歳、男性。政府の高官でしたが、日頃の恨みから大臣の暗殺を計画、実行。その際、偶々近くに居た貴方が取り押さえた。六年前の事です。…これで良いですか？》」


「ああ。感謝する」


「《…もしかして、何か事件に巻き込まれてます？あれ程気を付けろと私が何度も＿》」


小言が始まったので切った。後で散々云われるだろうが、まあ良いだろう。……………有島武郎、か。


「思い出したか？」


押し殺したかの様な少年の声に、そちらを見る。怒りと期待の混ざった目だ。


「有島武郎。政府の高官で、謀反を起こした。ので俺が取り押さえた」


それだけだ。一息で云いきれてしまう程の情報量。俺が覚えていないのも無理はないな。


「少年、一つ問おう」


＿貴様は、自分が殺した虫けらの名前を、一々覚えているか？＿

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