百振目 ページ15
「みつけた」
やっと見付けた。
どれだけ走っただろうか、どれほど探したのだろうか。だが思ったより呆気なく、探していた彼はそこにいた。
恐怖と焦り、そして痛みに顔を歪ませ、腕から血を流し、肩で浅く息をしていた。…何かが可笑しい。
どくり、彼の腕から流れる鮮血が畳を濡らし、その口から赤い血が零れた。
僕に気付いた彼は、驚いた様に目を見開き、それから安堵の息を吐く。起こった事を伝えようと口を何度か動かし、しかし言葉は出ずに血を吐いた。
肋が折られたのだろうか、血の流れていない左手で痛みに堪えるように胸を抑え、息をしている。
「貞ちゃん」
「あぁ、任せとけ！」
主に伝言を、と言う前に貞ちゃんは僕の考えを感じ取り、駆けていく。
その背を見送り、僕は襖を閉じる。
部屋を見渡すと酷い有様であった。
十中八九、遡行軍の仕業であろう。
しかし、彼が今回の……
……あぁ、そうか。
まずは、彼の傷の手入れをしなければ。
人間はこの程度の傷でもすぐに死んでしまうのだ。
ハンカチくらいしかないけど、無いよりはマシだろう。そう思い、彼の傷口にハンカチを巻く。
白い布は血を吸い取り、すぐに赤く染まる。
「君達政府が生み出したテスト用の遡行軍ではない、本物の遡行軍が入ってきた、という感じかな？」
そう問えば、必死に首を縦に振る彼。
「もうし……け、っ……ませ……」
「君のせいじゃないから謝らないで。今は生きることだけ考えて、体力を温存させて」
「…審神者様が……っ、危険……に……！」
「主には鶴さんと小夜ちゃんがついてる。しかも、さっき貞ちゃんも向かった。それに、あの人は強い。だから大丈夫。取り敢えず、君が持ち込んだ敵だけでも消せないかな」
「…っ、その……札を……」
彼の視線を追うと一枚の札が。なるほど、これを破ればいいのかな。と間髪入れずに自身の本体で割く。すると切れた部分から灰となり消えていく札。
それを見て安心したのか、彼は意識を手放した。
…どうやら、これで札の効力は無くなったようだ。
後はどこからか入って来た遡行軍を倒せば終わり。
「…あの子が悲しむ顔を見たくは無いからね」
二度目の本丸襲撃、受けて立つ。
何度来ても、その度に返り討ちにしてあげよう。
僕もこの本丸と主、そしてまた出会えた仲間を手放したくは無いからね。
.
ついに話数が100に！！(番外編とかあるから実際はもうちょっとある、はず)
ありがとうございます！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 405人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒桜 - そして私は三日月さん推しなので、この作品で死にそうです、、、、ありがとうございます！！！(死亡) (2020年1月19日 17時) (
レス) id: 946cd3609e (このIDを非表示/違反報告)
無気力組(プロフ) - 黒桜さん» 最近来てくださった方ですか！ありがとうございます！！私も最近ゆるゆると続きを書き始めたところですので、もうしばらくお待ち下さい！応援ありがとうございます！！ (2020年1月19日 10時) (レス) id: f11b465254 (このIDを非表示/違反報告)
黒桜 - 最近読み始めてここまで来ました！応援してます頑張ってください！ (2020年1月19日 10時) (レス) id: 946cd3609e (このIDを非表示/違反報告)
無気力組(プロフ) - 伊達 光秀さん» わわっ、ありがとうございます！！全然更新出来てませんが、完結まで頑張ろうと思ってるので…気長に待っててください…！！見習いくんは、これからも元気にやってもらうつもりです……。コメントありがとうございました、嬉しいです！ (2018年10月14日 11時) (レス) id: f11b465254 (このIDを非表示/違反報告)
伊達 光秀 - 見習い君が助かってよかった！(泣)めっちゃ面白いです！これからも更新楽しみにしてます！ (2018年10月14日 8時) (レス) id: 9cccb0eb3e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：無気力組 | 作成日時：2018年4月30日 13時
