狩られる者。② (ページ43)

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第三章第三十三話ページ43

イルミはそう言うと、その主人とお手洗いに行ってしまった。その主人はちっと舌打ちをしている。

イルミの目を見ると、怖かった。
多分、お手洗いで殺すだろう。

案の定、イルミが一人で出てきて、うちの主人とイルミは目で合図をしていた。

あ、殺したんだ。と確信した。

「ねぇ、あの人あそこに置いてきたままなの？」

「いや、弟が処理してくれてる。」

ミルキくんかな？あ、いや、カルトくんだ絶対。

私達はそのあと、何もなかったように護衛を終えた。

★

ホテルに主人を送り届け、護衛を終えたあと私とイルミはホテルから出た。

「お！振り込まれてる！....ちぇ、こんなもんか。」

護衛にしては多いのだろうが、気に入られはしなかった。

「ねぇ、あの時さ、もしかして助けてくれた？」

「....さぁね。」

さぁねって、自分のことでしょ。

「....ありがとう。」

「........別に。」

「じゃ、私はこれで。またね、イルミ！」

イルミに手をふり、帰ろうとすると腕を掴まれる。
びっくりして思わず振り返った。

「俺、友達としてお前なんて見てないから。」

「....あっそー！いいよ別に。私はそう思っておくから。」

「....気づかないなー。」

へ？

ほっぺにふにっとなにか柔らかいものが当たる。
あ、これ唇だ。
え、誰の？
あ、イルミの....え？

「えぇえ！？」

バッとイルミから離れた。
何をやってるんだこいつは！？

「これで気づいたかな？友達として見てないって意味。」

「じゃ」と言うとイルミはササッと消えてしまった。

まだほっぺに残る感触が、私の頭をひどく混乱させた。そして、

「あ、暑い....！」

さっきまで冷房にあたって寒いな～なんて思ってたのに、すぐに体が暑くなった。
これはきっと、夏の暑さのせい。
そう、夏だからだ。

太陽が東から出てきて私の体に当たると我にかえる。そして二人に会いたくなった。

「最近、夜に出て早朝に帰ってきて寝てるもんな....」

私は走りにくいヒールを脱いで走った。
早く会いたい！会いたい！
裏道を通ってホテルまで近道をする。

早く会ってぎゅーっと抱き締めて....！！
すると角から二人組の男性が出てきて、激突。
あ、また、デジャブ

しかし三回目！踏ん張り、「ごめんなさい！」と男性二人に謝った。

「....こいつ、一角族ね」

「あ、あはは、珍しいでしょ？」

黙って見詰める二人。
この人たち、カタギではないな。
すぐにそう感じた。