第三章第二十四話 ページ34
☆
「お母さん！お父さん！」
私はある本を持って両親の前に出る。
二人はどうしたの？と首をかしげた。
「私、スイゾクカンに行ってみたいの！これ！」
そこにはたくさんの魚達が泳いでいる写真だった。
お母さんはう、うーんと苦笑い。
「A、これは人間の街に行かないといけないところなんだ。」
「じゃー、行こ！」
するとお父さんは首を横に振る。
「まだ八歳だろ？Aが大人に....二十歳になったらここを出ることが出来る。その時に行こうな。」
両親のニッコリと笑った顔は、今でも忘れられない。
☆
「お客さん、お客さん！！」
「ん？」
眠っていたみたいだ。パチッと目を開けると駅員さんが私を呼んでいた。
「もう終点ですよ？」
「あ！すみません！降ります！」
バッグを肩から下げ、隣に置いていた沢山の花束を両手に抱えるとすぐに降りる。
ペコリとお辞儀し、ホームを出た。
三、四時間くらい歩くと私の故郷がある。
森の中にあって見つけることが困難だが、私にはすぐにわかる。
故郷は、まだ残っていた。
家も、道も....畑は枯れていたけど、まだある。
四年も来てないから骨は自然と土に埋まっているだろう。
たくさんの花を全部置き、目を閉じ、私は手を合わせた。
そして目を開けて皆に話す。
「私、ハンター試験に合格したんだよ。」
それから私は沢山の話した。試験のこと、ゾルディック家のこと、闘技場のこと。
「あはは、ほんと、最近楽しいんだ！....まるで、あの頃に戻ったみたいにはしゃいで....」
「...お母さん、お父さん、皆....ずっと、愛してくれてありがとう。私も、愛してたよ。」
「私はこれから、ゴンとキルアと一緒にいる！守る！今度は絶対。」
「だって、愛してるから！」
私はバッグの中から写真を取り出した。
「持っていたんだ。この写真。」
少し焼け焦げているが、村の皆と並んでいる写真。
「今まで来なくてごめんなさい。これからも来ない日が続いてしまうと思う。けど、また絶対来るから。絶対。約束。」
相手の手がないが、空中で小指をたてる。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます。」
親指をたてた。
「ふふ、誓いのちゅー！なんてね。」
「またね！！」
私は歩いて、その場を離れた。
泣くかなと思っていたけど、全然涙は出てこなかった。不思議。
それよりも早く、二人に会いたい。会いたい！！
「待ってろよ！クジラ島！！」
そして私は走り出した。
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作者名：焼き肉 | 作成日時：2019年9月1日 14時
